■鍵となるのは「ロシアの石油」

 一方、国連の北朝鮮制裁の焦点となったのは、石油だ。北朝鮮には年70万~90万トンの石油需要があり、このうち、中国から50万トン、ロシアから25万トン、残りを中東諸国から輸入している。特にロシアは、今年1~6月に、ガソリンやディーゼル燃料など石油製品の北朝鮮への輸出を前年比で倍増させており、ロシアが石油を禁輸すれば、北朝鮮の経済活動が事実上ストップするどころか、軍事行動さえ起こせなくなる。

「とはいえ、北朝鮮と歴史的なつながりがあり、経済的にも深い関係のロシアとしては、米国中心のやり方を受け入れることはなかなかできないでしょう。だからこそ、米国と長い同盟関係にある日本が、両国の接着剤となるべきなんです。現在、日本には北朝鮮への太いパイプや有効な外交カードはありません。その日本にとっては、石油という武器を持つロシアを動かせれば、交渉のカードを持つことにもつながります」

■金正恩委員長が望むのは、一にも二にも体制保障

「北朝鮮の金正恩委員長が望んでいることは、一にも二にも体制保障。つまり、今の金体制を米国が認めることですよ。米韓合同軍事演習は、そんな北朝鮮からみれば、現体制の転覆を図るためのものとしか思えないはず。だから猛反発し、合同軍事演習の虚をついて、ミサイル発射や核実験を繰り返すんです。したがって、米韓両国は合同軍事演習を、北朝鮮はミサイル・核実験を、本来は互いに自制すべきなんです。その意味で言っても、米国のトランプ大統領も少し自制をしなければ、問題は解決しないでしょうね」

 米国も一方的に武力行使を匂わせたり、制裁カードを振り回すのではなく、譲歩すべきところは譲歩することによって、ロシアや中国に、金正恩氏の首に鈴をつける役割を担わせるべきだというのだ。「だからこそ、米国、ロシアと、それぞれ良好な関係にある日本が両国の間を取り持ち、国際社会の中で存在感をアピールするべき時なんです。中国はなかなか一筋縄ではいかない相手ですが、先ほどお話した通り、安倍首相がプーチン大統領と二人三脚で協議している姿勢を習近平国家主席に示すことで、中国を牽制することにもつながります。それで北朝鮮問題を打開することができれば、世界が日本を見る目も変わってくるでしょうね」

■中国の堪忍袋の緒も切れかかっている

 ロシアとともに長らく北朝鮮の“保護者”的な立場にあった中国だが、近年は、その関係に隙間風が吹いているとの指摘もある。「中国がかつて北朝鮮への制裁決議に理解を示したことに、北が反発。自制を求める中国をよそにミサイル発射や核実験を強行してきたことで、中国はメンツを潰された格好になっているんです」(外務省関係者)

 さらに、核実験も、前述の通り、中国主催の国際会議のタイミング。「中国の堪忍袋の緒も切れかかっている」(前同)という見方が、もっぱらなのだ。

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