日本男子ボクシング「世界チャンピオン」拳闘カタログの画像
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 10月22日夜、衆議院議員総選挙の開票特番が盛りあがる中、20.5%の最高視聴率を獲得したのはボクシング中継。2012年ロンドン五輪金メダリストの村田諒太(帝拳)がアッサン・エンダム(フランス)との再戦を制し、WBA世界ミドル級の新王者になった世界戦だった。

 スポーツ中継の歴代高視聴率ランキングでも、往年のファイティング原田や具志堅用高の世界戦が上位に名を連ねるボクシング中継。村田がプロに転向した頃から、再び各局が本格的に取りあげるようになり、今年は男子で9人、女子でも2人と史上最多の新王者誕生劇があった。「黄金時代再来」も思わせる現状を、90年代、『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』の企画から世界王者になった異色の実績を持つ飯田覚士氏はこう分析する。「WBA、WBC、IBF、WBOと日本人の挑戦できる世界王座が増えたことや、幼少期から家族の理解も得ながらキッズ大会に取り組める時代になったことでしょう」

 一方では、同じ世界王者でも「世界的に成功する選手と国内でも無名に終わる選手の格差が広がる」(前同)とも見ている。「海外でもビッグマッチに挑んで、凱旋帰国するというのが、次の時代の主流かもしれません」(同)

 ちなみにお隣の国、中国で日本のボクサーは、今も「手本」として尊敬されているという。様々な分野で失われかけた日本のプライド、それがボクシングには残っているのだ。

■WBAミドル級王者 村田諒太

デビュー/2013.8.25 所属/帝拳ジム 通算成績/14戦13勝(10KO)1敗
生年月日/1986.1.12
身長/183センチ
血液型/AB型
出身/奈良県奈良市

 ロンドン五輪で一躍、時の人となった村田は、プロ1戦目で日本と東洋太平洋の統一王者、柴田明雄との冒険マッチを豪快に突破した以降は、着実なキャリアを積んでいたため、再注目される機会は少なかった。しかし今年5月の世界初挑戦で、フランスの強豪アッサン・エンダムと渡り合い、 敗れはしたがWBA会長が直々に「判定は誤り」と公言。因縁の再戦でエンダムを7回終了後、TKOで勝利した試合は、圧倒的な注目を集めた。飯田氏は「生まれ持って恵まれた体格」と「右ストレートの完成度」が強さの軸だと見ている。

■WBO世界スーパーフライ級王者 井上尚弥

デビュー/2012.10.2 所属/大橋ジム 通算成績/14戦14勝(12KO)
生年月日/1993.4. 10
身長/164センチ
血液型/A型
出身/神奈川県座間市
趣味/ショッピング

 ボクシングといえば、昔は親から反対されることが日常茶飯時だったが、近年では、家族一丸でキッズ大会に臨む家庭も急増している。第1回全国U-15大会の最優秀選手となった井上はその象徴ともいえる存在で、その完成度は24歳にして過去の日本人ボクサーたちをすべて凌駕する勢いだ。百戦錬磨のオマール・ナルバエスをあっさり倒して2階級制覇をはたした試合は、世界中の専門家から絶賛され、今年9月には招かれる形で米国に進出。お手並み拝見で用意された世界7位アントニオ・ニエベスを、戦意喪失まで攻め続けた。成長過程の少年のような印象の井上だが、私生活では10月に長男を授かっている。

■WBA世界ライト級王者 ホルヘ・リナレス

デビュー/2002.12.15 所属/帝拳ジム 通算成績/46戦43勝(27KO)3敗
生年月日/1985.8.22
身長/174センチ
出身/ベネズエラ
趣味/音楽鑑賞

 ベネズエラの天才少年として、名門帝拳ジムの目に留まり、17歳で来日。日本でプロデビュー戦を迎えたリナレスは、アゴのもろさを露呈しながらも、それをテクニックでカバーしながら、芸術的なKOシーンを量産。すでに3階級で世界の頂点に立ってきた。日本語も流暢で、秋葉原に通うコンピューター好きでも知られる。

■IBF世界ミニマム級王者 京口紘人

デビュー/2016.4.17 所属/ワタナベジム 通算成績/8戦8勝(6KO)
生年月日/1993.11.27
身長/161センチ
出身/大阪府和泉市

 昨年4月にプロデビューし、今年7月に世界王座を奪取したのは日本史上最速。デビュー戦からの6連続KO勝利は、幼少期から世話になった“カリスマ”辰吉丈一郎直伝の左ボディブローを中心に生み出された。しかし対戦相手のレベルが向上したこともあって、ここ2試合は判定決着。次の防衛戦では「久々に倒しますんで」と陽気な関西弁で宣言してくれた。

■WBO世界ミニマム級王者 山中竜也

デビュー/2012.6.22 所属/真正ジム 通算成績/17戦15勝(4KO)2敗
生年月日/1995.4.11
身長/162センチ
出身/大阪府堺市美原区

 近年、世界王者になる選手は少なくとも高校在学中にアマチュアキャリアを積んだ選手が大半だが、山中は6人兄弟を支える母を気遣い、中卒後、寮生活でボクシングに取り組んできたハングリー精神の持ち主。今年8月、熊本に乗り込んで福原辰弥から王座を奪取すると、最愛の母にリング上で礼を言う親孝行をはたした。

■WBO世界フライ級王者 木村翔

デビュー/2013.4.22 所属/青木ジム 通算成績/18戦15勝(8KO)1敗2分
生年月日/1988.11.24
出身/埼玉県熊谷市

 デビュー戦から初回KO負けの苦杯をなめた木村は、アジアのローカル王座を獲得してもなお知名度が低かったが、 今年7月、中国の国民的スター選手ゾウ・シミンをKOしたことで、日本より先に中国で有名人となった。酒屋でのアルバイトで生計を立ててきた男のシンデレラストーリーは、同国で「日本のロッキー」と評価されているという。

■IBF世界スーパーバンタム級王者 岩佐亮佑

デビュー/2008.8.2 所属/セレススポーツジム 通算成績/26戦24勝(16KO)2敗
生年月日/1989.12.26
身長/170センチ
血液型/O型
出身/千葉県柏市
趣味/ドライブ

 好戦的なサウスポーの岩佐は高校時代からその才能を高く評価された逸材だったが、山中慎介との出世争いや英国での世界王座初挑戦で敗れ、トップ戦線から退きつつあった。しかし今年9月、高校時代からのライバルだった小国以載から世界王座を奪取。小国を何度も倒し、ドクターストップに追い込む攻めは長年の執念そのものだった。

■WBC世界ライトフライ級王者 拳四朗

デビュー/2014.8.3 所属/BMBボクシングジム 通算成績/11戦11勝(5KO)
生年月日/1992.1.6
身長/165センチ
出身/京都府京都市

 日本では最重量となるミドル級に収まらず鍛え続けた父・寺地永氏の夢を引き継ぎ、急ピッチで世界王座に駆け上がった拳四朗は、父とはあまりに対照的な容姿で、マツコ・デラックス氏から「おこづかいをあげたくなる」と茶化されたほど幼い。それでも世界を制すだけの技巧を備えており、初防衛戦では劣勢を挽回するタフネスぶりも披露した。

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