■娘が連絡してくれるようになった

 取材の最後に、田代氏は照れ臭そうに目を伏せながら、こう話してくれた。「時間はかかりましたが、最近やっと、娘が連絡してくれるようになったんです。病み続けて、立ち直っていく姿を、どこかで見てくれていたのかもしれませんね。それからリーダー(元ラッツ&スターのメンバーで歌手の鈴木雅之氏のこと)も、“いつでも見ているから頑張ってほしい”と言ってくれていると、人づてに聞いています。本当にありがたいですよね」

 プレッシャーと孤独から薬物に手を染め、どん底まで落ちた田代氏が、そこから立ち直ろうと思えたのも、この施設をはじめとした周囲の支えがあったからなのだろう――。

田代まさし(たしろ・まさし)
1956年、佐賀県生まれ。24歳のとき、シャネルズ(後のラッツ&スター)のメンバーとして、歌手デビュー。その後、お笑いタレントに転身して数々のテレビのレギュラー番組を持ち、お茶の間の人気者に。しかし、2001年12月、薬物の所持・使用で逮捕。その後、2004年9月、2010年9月と再び逮捕され、刑務所へ。計7年間の刑期を終え、薬物依存症からの回復と社会復帰支援を目的としたリハビリ施設「ダルク」で治療を受ける。現在は、同施設のスタッフとして勤務するかたわら、全国各地で講演会などの活動を行っている。

近藤恒夫(こんどう・つねお)
1941年、秋田県生まれ。日本ダルクの創設者で代表。72年、薬物におぼれ、78年、精神病院に入院、80年に逮捕、札幌地裁で有罪判決を受ける。再起を誓い、85年、薬物依存者のための日本初の民間リハビリセンター「ダルク」を創設。薬物依存者の社会復帰を応援する一方、啓蒙活動を続けている。95年に東京弁護士会人権賞、2001年に吉川英治文化賞、13年に作田明賞最優秀賞を、それぞれ受賞。

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