マネー講座「年金」一番得するもらい方の画像
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 そろそろ還暦、という年齢になると気になり出すのが年金のこと。65歳からもらえることは分かっていても、いくらもらえるのか? いつからもらうと得なのか? 知らない人は意外に多い。そんなお父サンのために年金制度のイロハと賢い受給の仕方を教えます!

【第一部】10分でわかる年金の仕組み

「1月17日、自民党は原則5年ごとに見直す『高齢社会対策大綱』の改正案を部会で了承。公的年金の受給開始年齢について“70歳を超えても選択できる制度変更を検討する”としており、政府は月内にも閣議決定する予定です。年金受給開始年齢を75歳以降にまで繰り下げられるようにする狙いがあるとみられます」(全国紙政治部記者)

 ――というニュースを見ても、いま一つピンと来ない人も少なくないはず。そこでまずは、年金の基本的な知識について、おさらいしておこう。

 図1を見てもらおう。かつてはもっと複雑だったが、昨年の改正を受け、日本の公的年金は「国民年金」と「厚生年金」の2階建てとなっている。前者は日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人の加入が義務づけられている一方、後者はサラリーマンや公務員など、いわゆる「勤め人」が、給与から有無を言わさず天引きされる年金(ただし、その保険料は雇用主が半分負担)だ。「支払われる年金は、一定の年齢になるともらえる老齢年金、病気やケガの際にもらえる障害年金、死亡した後に家族に支払われる遺族年金の3種類があります」(ファイナンシャルプランナー)。

●サラリーマンと自営業の違い

 ちなみに40年間、国民年金(月に1万6490円=平成28年度)の保険料を払い続けた場合、年間78万100円を老齢基礎年金として受け取ることになる。月にならすと約6万5000円。この額で老後の生活をまかなうのは無理だが、ないよりはいいだろう。

 一方、厚生年金の給付額は「報酬比例」(現役時代の報酬額と加入期間)によって決まるため、人それぞれで違ってくる。ちなみに厚労省年金局がまとめた『平成26年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によれば、厚生年金の平均受給年金額は年間177万6000円。月にならすと約14万8000円が、前出の国民年金に上乗せされる。勤め人と自営業者で大きな差があるが、「サラリーマンに比べ、自営業者は自己申告でかなりの部分を経費で計上できるなど、税制上優遇されている点も考慮されているようです」(前出のプランナー)。

 ちなみに公的年金の財源は、(1)現役世代が支払う年金保険料、(2)約150兆円ある年金積立金を『年金積立金管理運用独立行政法人』)が株式投資などで運用する運用益、(3)国庫負担(税金)の3つからなるが、ご承知のように少子高齢化がハイペースで進んでいるため、慢性的な財源不足に陥っている。「団塊世代が働き盛りだった1980年(昭和55年)には、現役世代10人で高齢者1人を支えていましたが、2013年(平成25年)には3人で1人を支える形になりました」(経済誌記者)

 さらに、「2023年には、現役世代2人で受給者1人の年金を支えることになると予想されます」(前同)

●給付する時期を遅らせ…

 日本は世界に冠たる「国民皆年金」の国ではあるが、年金制度の足元が大きく揺らぎつつあることもまた事実だ。政府が、それをなんとか持ちこたえさせるためには、「現役世代の払う保険料を上げる」か、「給付する金額を削減する」か、あるいは「給付する時期を遅らせる」か――という選択しかない。「公的年金の受給開始年齢は、かつては55歳でした。それが今は、伸びに伸びて原則65歳。これを70歳、75歳と遅らせれば、それだけ給付する金額はかなり削減できるというわけです」(同)

 受給者本人が希望すれば、この受給年齢は、原則の「65歳から」を、前後に最大で5年ずつずらすことができる。60歳から年金をもらう繰り上げ受給、70歳からもらう繰り下げ受給に変更することが可能なのだ。「繰り上げも、繰り下げも1か月単位で可能です。もちろん、繰り上げる場合には受給額は減額されるし、繰り下げる場合には増額される。どうするかは、その人の考え方、ライフスタイル次第ですね」(前出のフィナンシャルプランナー)。

 これは国民年金も厚生年金も同じで、具体的には繰り上げ受給の場合は1か月ごとに0.5%減額されるし、繰り下げ受給の場合は1か月ごとに0.7%増額される。繰り上げも繰り下げも最大で5年なので、それぞれに〈12か月×5年=60か月〉を掛けると、繰り上げれば毎回の受給額は最大30%の減額、繰り下げれば最大42%の増額となる。

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