■治療法が驚愕の進歩!

 だが、朗報もある。現在、がんの治療法は驚くほど進歩しているのだ。「最近は“ナノテク”、“コンピュータ解析”、“ケミカル技術”がより確かなものになり、回復を諦めていた多くの患者が助かっています」(医療ライター)

 さらに、注目の新しい治療法もあるという。「アメリカ国立衛生研究所の主任研究員である小林久隆氏が開発した“近赤外線”によるがん治療です。今年3月から日本でも臨床試験がスタートします」

 こう解説するのは、医療経済ジャーナリストの室井一辰氏。これは“光免疫療法”といわれるものだ。「がん細胞の壁は、厚くて固い。その壁を破るため、爆発力のある化学物質と、近赤外線を利用した治療法で、なんと、ものの1分間でがん細胞を破壊できるんです」(医療ライター)

 アメリカの例では、手術や放射線で治らなかった首や舌などの“頭頸部がん”の患者8人のうち7人で、がんが縮小。うち3人は、がんが消滅したという。「近赤外線といっても、テレビのリモコンに使われる電磁波と同じもの。安全なんです。加えて、患者自身の抗体をそのまま使うため、副作用も少なく、斬新ながん治療法と専門家の間でも評価されています」(前同)

 これだけではない。摘出手術、放射線、抗がん剤が3本柱のがん治療。これを、より効率的にする“がんゲノム医療”も、今年から一般化され、希望者の列は絶えないという。医療ジャーナリストの牧潤二氏が言う。「“がんゲノム医療”は、患者の遺伝子情報を調べ、その人に適した治療法や薬を選択するものです。遺伝子検査は、すでに一部の医療機関でスタート。加えて厚労省は、この3月までに、この“がんゲノム医療”を始動させ、全国の100施設程度にまで広げる予定です。有効性などを確かめたうえで、今年中にも、保険診療で受診できるよう、制度を整備する予定だといいます」

 夢の“ゲノム医療”実現は、もう眼前にあるのだ。前出の室井氏もこう続ける。「抗がん剤の効果や副作用は、患者ごとに差が大きい。遺伝子検査による“プレシジョン・メディシン(精密医療)”は、医療の質を上げる意味でも、大きいと思います」

 もう一つ、画期的な治療薬が、新たに保険適用薬として認められた。それが免疫チェックポイント阻害薬の『ニボルマブ』(商品名=オプジーボ)。京都大学医学部の本庶佑博士が開発を主導し、小野薬品が製造販売していた薬で、今までの抗がん剤とは違う発想で作られたという。「がん細胞は、普通の正常な細胞のフリをする。これが厄介で、抗がん剤も騙されてしまい、がん細胞をなかなか退治できません。『ニボルマブ』は、がん細胞のこの“偽装”を抑制するように働く。そして、自身の免疫システムで、がん細胞を攻撃して死滅させるため、副作用も少なく、画期的な薬なんだそうです」(前出の医療ライター)

 ありがたい話だが、問題は値段の高さ。なんと、年間1700万円かかる“高級薬”だ。「現状では、悪性黒色腫(メラノーマ=皮膚がん)や、ある種の肺がんにしか保険適用されていません。今後、腎臓がんなどにも適用されることが期待されています」(前同)

 とはいえ、同様の抗がん薬『キイトルーダ』の登場に加え、厚労省からの「値下げせよ」というお達しもあるため、価格の低下は期待できる。

 さらに、先頃、スイスの製薬大手のノバルティス社の新薬も、アメリカで認可されたことが話題だ。その名も『キムリア』。最新の遺伝子技術が駆使されている。「これは、急性リンパ性の白血病に効くもの。臨床試験では、83%の確率で効果を示しました」(前出の全国紙文化部記者)

 これもやはり金額の高さが懸念材料だが、その価格は聞いてびっくり!「『キムリア』はケタが違う。1回で約5000万円に設定されています」(前同)

■漢方生薬も延命につながる

 こうした最先端の治療薬が注目される一方、東洋医学、すなわち漢方生薬も頼もしい存在として、今また、もてはやされている。「放射線や抗がん剤での治療をすると、がん細胞は縮小しますが、体は弱りがち。その結果、病状が悪化しかねません。抗がん剤による体力低下は四君子湯、免疫力増強は十全大補湯、免疫細胞の強化は補中益気湯などに効果があることが分かっています」(前出の福田氏)

 漢方生薬は、抗がん剤の効果を高めたり、延命につながったりするという。「漢方薬の良さは、患者の状態に合わせて、配合を変える“オーダーメイド処方”が可能な点。自分で納得できる治療法を、模索することがポイントです」(前同)

 無理をせず、やれることだけ、やればいい。「がんと長寿」の最新レポートは、ここまで。幸せに長生きできるよう、皆様のご健勝をお祈り申し上げます!

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