■わずかな睡眠と重労働…常人離れした体力と健康の源は?

 9時からは、他の作業員と一緒にボランティア活動をする。ここでも“ファン対応”に追われたが、尾畠さんはイヤな顔せず、すべて笑顔で応える。この日の作業は、被災した家の床下に溜まったヘドロのかき出しだ。夕方まで、被災者の生活再建のために働く。15分の作業で10分の休憩が必要なほど暑く、熱中症になる人も少なくないが、動きは止まらない。昼食は、本来は電子レンジの加熱が必要な“パック飯”に水を入れて梅干しを乗せた物。差し入れがなければ、基本的に毎日の朝食と昼食はこれ。記者にもご馳走してくれたが、これが意外と柔らかくて、うまい。夕食は食べたり食べなかったりするそうで、この日は結局、食べなかった。ボランティア後は、深夜0時まで自動車前でファンやマスコミ関係者と話す。しかも、これが毎日続いているというのである。

 連日、わずかな睡眠で、酷暑の中の重労働。しかも、健康保険は11年間使っていない。その常人離れした体力と健康の源はいったい、どこにあるのか。「“医は食にあり”っていうように、健康は食事にあると思っています。だから、私は“おいしい物”は食べません。食べるのは、“体に良い物”だけ。大分にいるときとボランティア中で食べる物は違うけど、この考えは変わりません」

 大分にいるときは、「ブラジル産の鶏肉や、魚をよく食べます。魚は、市場などで余ったような小さい魚ですね。なんでもいいです。とにかく、安く済ませたい。1か月5万5000円の年金で生活していますから」

 食事にお金をかけないのは、ボランティア活動で必要になるから。大分から広島も、山口県周防大島までも、一般道を走ってきた。「金がなくても、腹が減ったら雑草を食べればいいんです。シロツメグサなんて、どこにでも生えてるし、おいしいですよ」

 こう言って、目の前のシロツメグサを食べて見せた。他にも、生食に加えて湯がいて食べることも多く、焼肉のタレをつけて楽しむこともある。なお、『うまい雑草、ヤバイ野草』(サイエンス・アイ新書)などの著書がある野草研究家の森昭彦氏によると、「クローバー病」のように野草や雑草の食べ過ぎで体のマイナスになることがあるので、食べ慣れていない人は注意が必要という。

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