■巨人軍に入団して優勝に貢献

 その後、ミスターは巨人入り。そして早くもその年の夏には4番に座り、リーグ優勝に貢献。その野性的でイキイキとしたプレーがファンを魅了していった。そんな長嶋は当然、練習のときから異彩を放っていたという。

「キャッチボールも、興が乗ってくると、本能的にボールを前で取ろうとするのか、ミスターは距離をどんどん縮めてしまうんです。でも、本人はそのことに気づいておらず、スローイングの速度は変わらない。最終的には至近距離での剛速球でのキャッチボールになり、パートナーを務めた選手は“怖い”とこぼしていました」(元巨人軍関係者)

 長嶋氏と三遊間コンビで、V9時代の巨人軍を支えた黒江透修氏も、その一人。当時のことを聞いてみた。

「あの長嶋さんが相手ですから、いい球を投げないとと思うと、ついリリースに力が入ってしまう。長嶋さんとのキャッチボールは、こちらも神経を遣いました。試合中は、長嶋さんが難しいゴロを華麗にさばいて一塁でアウトを取ると、その後、内野手でボール回しをするでしょう。通常1〜2回、回して終わるところ、長嶋さんは気分が良いと5回も6回も続けてしまう。アンパイアに“いい加減にしろよ”と注意されることもよくありました(笑)」

■美食家としても有名

 美食家としても知られるミスター。後楽園球場の近くにある(現在は東京ドームホテル内)、『後楽園飯店』の「フカヒレの姿煮入り汁そば」を愛したことは有名で、同店には同じものを食べようと長嶋ファンも多く訪れるというが、巨人軍番記者によると、「現在メニューにある3240円のものと、ミスターが食べていたのは別物でしたね。ミスターのは、ものすごい大きな最上級のフカヒレが入った逸品でした」

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