つまり、あれほどメンバー同士が競争のなかに置かれているように見えるAKB48グループも、指原莉乃にとってはようやく見つけた自分の居場所であったのだろう。その点、グループは年限の決まっていない学校のようなものになっている。

 アイドルグループがそんな「居場所としての学校」であることは、乃木坂46を見ているとよりはっきりと感じ取れる。

 デビュー曲から『君の名は希望』(2013)までセンターを務めた生駒里奈は、現実の学校に馴染めずにいた過去をさまざまな機会に語っている。小学生時代、転校先の学校で無視されたりロッカーのなかの私物を荒らされたりするなどいじめの標的になり、ひとり図書室で過ごす日々だった。中学では親友に出会うことができ、救われた。しかし、その親友とは高校が別々に。再び彼女は部活にも入らず引きこもり気味の生活になり、高校を辞めたいとまで思い詰めるようになっていた。

 その様子を心配した生駒里奈の父親が受けることを勧めたのが、乃木坂46のオーディションだった。それは、彼女自身が当時抱いていた「学校から逃げたい」という思いとつながった(『乃木坂46物語』)。合格して彼女がうれしかったのは、この芸能の世界には「私をいじめるひとがいない」ということだった。

 そんな生駒里奈だが、昨年2018年5月で乃木坂46を卒業した。彼女のブログには、その理由として同学年のひとたちが新社会人として新たなことに挑戦する年であることが挙げられている。つまり、22歳の彼女と同い年の多くは大学などを卒業する年齢だから、というわけである。

 まさにそれは、生駒里奈にとって乃木坂46が学校生活のやり直しだったことを思わせる。だから卒業の決断は、現実の学年に合わせて下されるのが自然だった。

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