■2 「専門店化」

 鳥貴族が、居酒屋チェーンの専門店化を進めた立役者でもある。後発の串カツ田中も急成長中だが、ワタミやモンテローザ系の総合居酒屋が続々と店を閉じる一方で、代替を務めた格好だ。

 焼き物、揚げ物に専従すれば、仕入れもオペレーションも統括しやすく、効率的な経営ができる。典型的なのが07年の上場以来、12期連続で増収増益という、とんかつのかつやの存在だろう。

 だが、この傾向はなにも大手チェーンに限った話ではない。現在のグルメシーンでは専門性がとかく問われる。昨今の肉バルやオイスターバー、餃子居酒屋の隆盛を見ても、何かに特化するのが成功の鍵とさえ言えよう。馬刺やサムギョプサル、タッカルビなどの専門店もここ10数年の間にぐんと伸びた。「なんでも味わえ、そこそこうまい」総合店では最早通用しないのだ。

 そもそもすかいらーくはガストとジョナサンのほかにも、中華レストランのバーミヤンに居酒屋機能を持たせることで、拡充してきた。むろん、それは居酒屋ユーズが主な日高屋の成長を意識してのことだ。

 ファミレスでは、なんと言ってもサイゼリヤ。299円のミラノ風ドリアを軸に低価格メニューを揃え、コーディネートでイタリアンをカジュアルに楽しませるスタイルを根付かせた。デフレ化以降はオリジナルの輸入ワインのラインナップを充実させ、居酒屋としても親しまれている。

 なお、麺類こそ総花的では個性が出せないが、長崎ちゃんぽんのリンガーハットもバブル後の低価格競争に巻き込まれ、2000年代前半から10年の間、4度も最終赤字を計上。しかし、09年10月に「国産野菜100%」使用を標榜して以来、女性客の信頼を獲得し、17年2月期まで7期連続の増収、5期連続の増益という業績を叩き出した。このところ人件費高騰の煽りを食って低調だが、日本生産性本部が実施した顧客満足度調査では17年18年と、2年連続首位の座にある。

 一方、そこまでラーメンに特徴のない幸楽苑は基本的にロードサイド展開のため、ちょい呑みシフトも取れず、キャンペーンメニューのバラエティ路線も迷走。18年3月期連結決算は、大幅赤字に転落し、不採算店を閉鎖する一方、ペッパーフードサービスの「いきなり!ステーキ」のフランチャイズ店として業態転換を進め、経営の立て直しを図っている。

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