■ギャグセンスも一流

――国民栄誉賞を受賞した長嶋さんに「他にほしい栄誉はありますか?」と聞いたら、「世界遺産」と答えたという話もありますが?

「その話は嘘だと思います(笑)。他にも眉唾ものの話がありまして。V9時代に優勝旅行としてパリに行ったときのエピソードなんですけど、エールフランス航空の機内でキャビンアテンダントが“何か飲み物はいりますか?”と聞くと、川上哲治さんが“コーヒー、プリーズ”と答えて、続けて王貞治さんが“ミー、トゥー”と言ったら、最後に長嶋さんが“ミー、スリー”と言ったという(笑)。これも真偽が怪しいんです。それと、長嶋さんから笑わせようとしているケースもありますから」

――長嶋さん持ち前のサービス精神ですね。

「そうそう。熱烈なファンでもあるクライアントの方の“息子の結婚式で乾杯の挨拶をしていただきたい”というお願いを、長嶋さんがOKしたときの話もあります。長嶋さんは当日になって体調を崩してしまいましたが、律儀な方だからタキシードを着て会場まで行ってクライアントの方にお詫びして帰られたんですよ。1か月後、立教大学野球部OBの会合に長嶋さんが見えられたので、私が“あの日は体調を崩されて大変でしたね”と聞いたら、“いや〜、熱が出ちゃってね。3割7分8厘”と答えられたんですよ(笑)。これは、私を笑わせようとした発言だと思います。そういうお茶目な一面もありますね」

――ギャグセンスも一流なんですね。

「監督時代、新聞記者にシメサバをプレゼントしたことがあったんです。記者がお礼を言ったら、長嶋さんが“サバってどういう字だったっけ?”と聞いてきたので、記者がメモに『鯖』と書くと、“お〜、魚偏にブルー”と言ったそうですが、これも長嶋さんのサービス精神だと思うんです。自らネタを振っていますからね(笑)」

――周囲を楽しませようと意識しているんですね。

「長嶋さんには“長嶋茂雄でいなければいけない”という美学があるんですよ。人を楽しませる発言もその一つですし、ユニフォームを脱いだ後もランニングや腹筋を欠かさず、現役時代の体型を維持するように努めていました。監督として、日本一になって胴上げされた2000年の写真を見てください。宙に浮かんだ瞬間、長嶋さんは腹筋を締めて足を上げて、体全体をV字にしているんですよ。こんな監督は長嶋さんくらいだと思います。“アスリートかくあるべし”という美学なんでしょうね。脳梗塞で倒れた後も、一時的に太ったものの“このまま世間に出たら長嶋茂雄じゃない”と、体型を戻してから表舞台に出られたわけです」

――常に「長嶋茂雄」を貫こうとしていると。

「間違いないですね!」

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