■樹木希林が水面下で動いて
浅田 それで怒られて。でも、それがきっかけで仲良くなって、その関係が公私にわたって45年続きました。映画の話に戻すと、この事件があったときに、ワイドショーでやっていて。「これなら美代ちゃん、演じられるんじゃない」って話を振られて「えー! でも、私には来ないでしょ」ってやりとりがあったけど、水面下でいろいろと動いてくれたみたいで。
――台本を読んで、いかがでしたか。
浅田 ばぁばとは「単なる女詐欺師の話じゃなくて、“女の悲しさ”みたいなのが出せるといいね」って話したんです。劇中では、渡部聡子という名前で、彼女がどうしてこういう事件を起こして、どうしてこうなったのか……。表現するのは難しいとは思いましたが。
――演じたエリカこと渡部は、どんな女性ですか?
浅田 本性は詐欺師じゃないとは思いましたね。実はつい先日、偶然にも福岡の大牟田に行ったときに寄ったレストランが、本人(山辺)がお客さんを連れてよく来たというところだったんです。そのときに、そこの女将さんが「ホントにかわいくて、いい人なのよ~」って言っていたんですよ。
――いい人ですか。人たらしだったんですかね。ちなみに、演じる中で心がけたことはありましたか。
浅田 いかにも詐欺師っぽい、「この女、怪しくない?」っていう感じにはならないようにしたいなって思っていろいろ考えてたときに、ばぁばから助言をもらって。
――どんなことでしたか?
浅田 プライベートで動物愛護の活動をしているんですが、その話になると、すごく一生懸命になれるんです。そしたら、「美代ちゃん、それなんだよ。そうしたら、みんな、ついてくるでしょ」って言われて、そういうことかって。
――なるほど。他にも?
浅田 ばぁばに昔から、役は扮装で決まるって言われていたので、衣装はほとんどが自前でした。
――渡部の母親役を希林さんが演じられましたね。
浅田 ばぁばとの撮影の日が、たまたま私の誕生日と重なってね。ばぁばは毎年、誕生日になると温泉や食事に連れて行ってくれたんだけど、この日は現場で『赤い風船』を歌ってくれてね。それを聴いて「今年も一緒にいてくれたんだ」って、ちょっと涙が出ましたね。