■盗撮写真の第一人者は演歌の女王と結婚!?

 81年に『アクション・カメラ術 盗み撮りのエロチシズム』(ベストセラーズ)という本が、その年を代表するベストセラーとなった。この本は、今日なら倫理的、コンプライアンス的に絶対に出版が不可能な一冊だ。なぜなら、女性をセクシャルに盗撮するためのハウツーをまとめたものだからである。

 著者の馬場憲治は元々は芸能プロのマネージャーであり、のちに出版畑に転じ、その延長線上で写真家としても活動していた人物。すぐに出版された続編もヒットし多額の印税を得ることになるが、さらに同年中に有名歌手と結婚を発表し大いに話題を集めた。

 相手は、デビュー時はアイドル系歌手で、今も歌い継がれる『津軽海峡・冬景色』のヒットで人気演歌歌手となった石川さゆりだ〈*〉。ただし、この2人は写真家と被写体として出会ったのではなく、もともとマネージャーとタレントという関係だった。

 広告写真の分野で数々の賞を得ている上田義彦は、93年にモデル、歌手、女優とマルチに活動する桐島かれんと結婚。そして、かれんの弟で、写真家の桐島ローランドは、96年に当時人気絶頂の女優・江角マキコと婚姻関係を結んだ〈*〉。

 今はおばあさん役を演じることが多い女優の竹下景子は、20代のときに「お嫁さんにしたい女優NO.1」と呼ばれていた。10代からも“憧れのお姉さん”的な存在として人気が高く、彼女の初ヌードグラビアが掲載された男性誌『GORO』(小学館)は完売し、のちに古書市場で万単位で売買されたほど。

 竹下は、このヌード写真を撮影した15歳年上の写真家・関口照生と84年に結婚している。関口はその何年も前から竹下の写真を撮り続けてきた経緯があり、彼女に全幅の信頼を置かれていたようだ。

 関口と竹下のように、仕事における無二のパートナー関係から結婚した例は他にもある。

 映画監督の回でも触れたが、もともとアーティスト写真の撮影、MV制作を手掛けていた紀里谷和明は02年に宇多田ヒカルと結婚している。紀里谷は以前から、宇多田のジャケット写真やMVを任せられていた。つまり、彼女にとって信頼できるクリエイターだったのだろう。

 人物写真を中心に雑誌や写真集、広告などのジャンルで活動する桑島智輝は、14年に安達祐実と結婚。2人は、2年半に及ぶ撮影期間をかけて、『私生活』(集英社)という写真集を共同制作している。この写真集はパート2も出版され、桑島は結婚後もずっと、安達を被写体として毎日のように作品を撮り続けているという。

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