■“背広を着たON”の対決!

 それから19年。再び対峙することになった巨人とソフトバンク。くしくも、両球団が日本シリーズで対戦するのは、ミレニアム対決以来。長嶋と王はすでに現場を離れているが、その勝負への執念は、今なおチームに残っていたという。「今回の日本シリーズは、原巨人対工藤ソフトバンクの戦いじゃない。“背広を着たON”の対決だったんですよ」

 こう語るのはONと親交のある関係者だ。さらに続ける。「工藤は、球団OBとして監督になっているが、チームの骨格を作り上げてきたのは間違いなく王さん。巨人も同様で、近年の長嶋さんは、もはや実質的な総監督。原の再登板も丸の獲得も、長嶋さんのフォローがあってこそ。両球団が2人のカリスマ性で成り立っているのは、疑いようもない事実なんです」

 だが、そんなON対決の再来は、10月23日、ソフトバンクの4連勝という一方的な結果で終わった。王がリベンジを果たした形となったが、前出の関係者は、この結末に「19年間の両者の差が出た感じ」と、こう続ける。「ミスターの代名詞ともなった大型補強は、原監督に受け継がれ、第二次原政権時、10年間で2回も3連覇する黄金時代を築き上げた。しかし、15年の原監督勇退が、巨人の大きなターニングポイントとなりましたね」

 原監督の退任後、巨人は「4年連続V逸」という、不名誉な球団ワーストタイ記録を樹立してしまう。「主力選手の高齢化もありますが、低迷の本当の要因は、近年の補強が失敗続きであること。FAも外国人も、獲得した選手がまるで活躍ができていない。黄金期との違いは、そこに尽きます」(前同)

 球団創設以来の危機に、球団は最後の切り札として原に監督就任を要請。チーム編成まで司る“全権監督”となった原は、60億円ともいわれる大型補強を敢行し、チームを見事、優勝へと導いた。しかし、そんな巨人を冷静に見つめる人物がいた。誰あろう、長嶋茂雄その人だった。今年の日本シリーズ前、長嶋は巨人の現状を次のように分析し、関係者に語っていたという。「“大型補強をした”と言っても、成果があったのは丸だけ。今年は原がやりくりして、うまく選手を乗せて、なんとか勝った感じ。必ずしもパーフェクトな状態じゃない」

 実際、今回のシリーズで原監督は、経験の浅い若手選手たちを起用。ミスも目立ち、敗因の一つとされた。「選手層の薄さが如実に出てしまったね」(球界OB)

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4