「ハムちゃんは2戦目よりフィジカルが強くなっていた」

――最後の試合は去年の大みそかのRIZINでのハム・ソヒ戦ですね。あの試合は大激闘でしたが、惜しくも1-2のスプリット判定で敗れてしまいました。彼女とは3度目の対戦でしたね。

「はい。ハムちゃんとは、けっこうやってますよね(笑)」

――最初の2戦は浜崎さんが勝ってます。初戦2010年12月で3-0の判定勝ち、2戦目は翌年12月でTKO(テクニカル・ノックアウト)でしたが、3戦目までかなり時間が空いていますね。8年前と比べて、ハム選手は強くなったと感じました?

「いや、2戦目はTKO勝ちでしたけど、向こうが負傷して止められた形だったんです。今回と同じで、1Rで私は三角(締め)に入られていました。その中での負傷TKO勝ちだったんで、あまり勝ったって感じじゃなかったんです。今回も8年前と同じようなこと(三角締め)をされてるんですよね(苦笑)。

(2戦目では浜崎が胴タックルでテイクダウンし、その際にソヒは腰を強打。ソヒはその後、下から三角締めを狙うが決めることはできず1Rが終了。しかしソヒは腰の痛みで起き上がれず、浜崎のTKO勝利となった)

 だから、あの時より、お互い強くなってますけど、ハムちゃんの戦いのスタイルは、そこまで変わってなかったかな、っていう印象です」

――スタンドの打撃も、それほど以前と変わった感じはなかった?

「打撃に関しては、彼女は昔からあのスタイルで変わってないですね。ただ、一発の強さ、パワーとかフィジカルは前よりもかなり強くなっています。前戦った時は、階級が1つ上だったんですけど、その時より体もできてるし、フィジカルの部分ではレベルが1つ上な感じがしました」

――総合格闘技ではスタンディング状態での打撃、投げやタックル、寝ワザでのサブミッションやパウンド(打ち下ろす打撃)など、身に付けなくてはいけないことがたくさんある。浜崎さんはもともと柔道出身で組技系ですが、組ワザ系の人が打撃の練習を何年も続けて上達してくると「試合でこれを使いたい」と思ってきますよね。

「ええ、まさしく」

――そこで、ちょっといいパンチを入れることができると、「よっしゃ~! これでKOするぞ!」って、なりがちで。

「アハハ、そう! やっぱり、打撃でKO勝ちって、憧れますよね。試合でしか本気で殴り合わないんで」

――ボクシングの選手だと、大きいグローブにヘッドギアもつけて、ガチで殴り合うスパーリングもあるけど、総合だと、オープン・フィンガー・グローブ(相手をつかめるように指の出た総合格闘技用グローブ)はかなり薄いし、ガチでのスパーリングはしにくいですよね。骨折やカットもしやすいし。

「なかなか、ねえ……。でも、こないだの負けはプラスになった負けだったな、と思ってますから、まあ、良かったです」

――見てて面白かったです、ホントに。あの大みそかのRIZINの全試合中、一番見ごたえがあったんじゃないですか。

「ホントですか? ありがとうございます!(笑)」

↓あの興奮がよみがえる! 熱戦のもようがノーカットで!

 

 後編では、ハム・ソヒとの再戦への思いと、新型コロナウイルスの影響で自粛を余儀なくされる今の気持ちを聞いた。

(取材・文=稲垣收)

浜崎朱加(はまさき あやか)
1982年山口県生まれ。総合格闘家。AACC所属。高校から柔道を始め、2009年プロデビュー。10年にJEWELS初代ライト級王者、15年に米Invicta FCアトム級で日本人初の世界王者となり2度防衛に成功。18年からRIZINに参戦し、同年大みそか、浅倉かんなに一本勝ちして初代RIZIN女子スーパーアトム級王者に。総合戦績19勝3敗。米の格闘技サイトSherdogの女子アトム級世界ランキング2位。
Twitter:@kk331ayaka Instagram:ayaka0331

稲垣 收(いながき しゅう)
1962年東京生まれ。語学月刊誌の編集を経て、89年よりフリーライターに。モスクワ・クーデター、ドイツ統一、ソ連崩壊、グルジアやユーゴ内戦、パレスチナ等を取材。92年から格闘技の取材も。「UFCー究極格闘技ー」(WOWOWで)では長らく解説を務めた。自らもキックボクシングなどさまざまな格闘技に親しむ“闘うジャーナリスト”。著書に『稲垣收の闘魂イングリッシュ旅行編』『男と女のLOVE×LOVE英会話』、訳書に『KGB格闘マニュアル』などがある。
Twitter:@ShuInagaki

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