吉川晃司
吉川晃司

 6月16日から始まった特別ドラマ「探偵・由利麟太郎」(カンテレ・フジテレビ系)の主演、吉川晃司(54)が話題だ。そもそも、アラフォー、アラフィフで吉川晃司を嫌いという人は少ないだろう。当然、私も好きだ。

 なにを聞いても、ちゃんと答えてくれそうな誠実さをここまで感じる人はいない。1984年に『モニカ』で歌手デビューしたときは、水球で鍛えあげた見事な逆三角体型が美しく、どちらかというとアイドル的人気が高かった。7枚目のシングル『キャンドルの瞳』で『ザ・ベストテン』(TBS系)に出演した際には狭いスタジオでターザンのごとく縄にぶらさがってパフォーマンスをし、司会の黒柳徹子(86)がぶつからないよう逃げまどったハプニングはもはや伝説だ。

 そんなヤンチャな彼も、もう54歳。探偵ドラマで主演というから、当然、彼の運動神経を活かしたアクションものと思いきや、横溝正史の原作というだけあり、血生臭さや人と人との逃げられない「つながり」に苦しむ閉鎖感が炸裂。もうさんざん出尽くしたと思っていた探偵・刑事ドラマのパターンだったが「あえて1周してここに戻ってくるか!」と目から鱗であった。

 京都の神社仏閣、そして古めかしい洋館など、アナログ感あふれる妖しい世界観で、吉川晃司の年齢不詳の佇まいと長身、そして銀髪がなんと映えることか。吉川イコールアクション、と決めつけていた自分を恥じた。ツイッターに「吸血鬼みたい」というコメントがあったが、言い得て妙! まさに何百年も前から生きていたような感じだ。キャスティングをした人は、見事としかいいようがない。

 長いマントをひるがえし、京都の神社仏閣をうろつく吉川。そして弓をひく吉川。なんと耽美な! 先端恐怖症でおびえる姿もいい。そういえば『下町ロケット』(TBS系)で、財前部長役の彼がスーツ姿で田植えする姿も最高だった。自然をアクセサリーにする男。それが吉川晃司なのである。

 エンディングテーマ『焚き火』も彼が歌っているが、昭和刑事ドラマの名作『特捜最前線』(テレビ朝日系)の伝説的エンディング『私たちの十字架』を思い出させる激シブな仕上がり。ドラマの美しさに絡み、胸を掻きむしられる。

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