■長嶋茂雄監督と松井秀喜も

 球界を代表する師弟関係といえば、長嶋茂雄巨人軍終身名誉監督と松井秀喜。「92年のドラフトで、松井を引き当てたミスターは、『松井秀喜4番1000日計画』をぶち上げました。93年のキャンプ初日、フリーバッティングでポンポンとスタンドに入れる新人離れしたパワーに誰もが驚きましたが、ミスターは、松井の欠点を即座に見抜いたんです」(スポーツ紙記者)

 松井はそのパワーに反して、足首、ヒザ、股関節といった体全体の関節が硬かったという。「ミスターの指示で、松井に柔軟性を持たせる特訓をしたのが当時、打撃コーチだった中畑清でした。中腰で膝、足首全部を使ってローリングしながらリズミカルに素振りすることで、柔軟性を培う練習ですが、松井は毎日、ぶっ倒れるまで続けました。すると目に見えて体が柔らかくなってきたんです」(前同)

 同時に、長嶋監督とのマンツーマンの“素振り”の特訓が始まる。東京ドームで試合があるときは、全体練習の前後にブルペンか空き部屋で、遠征先ではホテルの監督の部屋で、ひたすら素振りを続けた。「2人の関係は、松井がメジャーに渡ってからも続きます。テレビで見た松井の変化に気づくと、ミスターは国際電話で松井を呼び出し、バットを振るように指示。受話器から聴こえるバットが空気を切り裂く音で、ミスターは松井の変調の原因を見抜き、助言を送ったそうです」(前同)

 世界のホームラン王・王貞治の一本足打法を生み出したのは、当時、巨人のコーチだった荒川博だ。「一本足打法は、ステップするときに手の位置が下がるという王の打撃フォームの欠点を直すためのものでした。足を上げた姿勢で微動だにしないような型にするのが大変だったそうです」(スポーツライター)

 一本足打法を身につけさせるために、荒川はとんでもない荒行を王に強いた。「天井から吊るした半紙を日本刀で斬らせたんです。王は荒川とともに作り上げた一本足打法があったから、前人未到の868本ものホームランを生み出すことができたんです」(前同)

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