■北大路欣也の自宅で

 一方、東映の金看板・高倉健(享年83)は酒を飲まず、銀座で豪遊するタイプではなかった。そんな健さんを尊敬する俳優は多く、前出の石川氏は、北大路欣也(77)も、その一人だと証言する。「あとで欣也さんに聞いた話だけど、2人はよく自宅を行き来する仲だったらしく、あるとき、健さんが欣也さんの家に行くことになったそうなんです」

 欣也は今か今かと待っていたというが……。「きれい好きの健さんが家に入るなり、“汚きったねえ部屋だなあ。おまえ、いつもこんなところに住んでいるのか?”と呆れて言ったそうです。それに対し欣也さんは“ええ、まあ、そうですよ”“慣れるもんですよ”と答えたとか」(前同)

 親しい関係がにじみ出てくるやりとりではないか。

 小林稔侍(79)は売れない時代が長く、健さんとは“主役と、その他大勢”といった構図での共演が多かった。だが、健さんは保証人を引き受けるなど、小林の面倒をよく見ていた。「稔侍さんにとって健さんは大恩人。だからこそ、初めて対等な立場の役を演じた映画『鉄道員』(99年)は忘れられない作品なんです」(映画雑誌編集者)

 この映画で2人は、お互いを思いやる旧友同士という設定だった。「親友同士である2人の抱擁シーンは、演技を超えた名場面でした」(前同)

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