そのアナウンサーらしくなさは、テレビの中で面白がられた半面、批判もたびたび起きてきた。その批判には、“女子アナ”が性差別的な構造の中に埋め込まれているという視点からのものもあった。

 ただ、賛否いずれにしても、“女子アナ”は報道番組でニュースを読む本来のアナウンサーからの差分を前提としてきた。そのギャップが面白がられたり、批判されたりしてきたのだ。それが“女子アナ”の消費のされ方だった。

 しかし、弘中は言うのだ。「私はバラエティしかやりたくないし、そっちに適正があると1年目から思ってた」と。そんな彼女は、本来のアナウンサーからの差分それ自体、彼女は最初から目に入っていなかったように見える。報道を本分とし、バラエティを本分ではないとするような、そんなアナウンサー観から自由だったように思える。

 オードリーのラジオ番組に出演した際、彼女は「夢は革命家」と語った。他方で、政治にあまり興味がないと話していたこともある。だから彼女が“革命”を目論んでいるのはもう少し社会的・文化的なこと、「○○ならこうあるべき」という人びとの常識だ。

 たとえば、テレビに出演する側ではなく制作する側として、ドラマ『おっさんずラブ』のような社会的な価値観に影響するコンテンツを作りたいと語ったこともある(NHK総合『新春TV放談2020』2020年1月2日)。

「結婚していない私は何か不足しているのでしょうか?」という視聴者からの悩みに対し、「逆に、自分に何か足りないからみんな結婚するんじゃないの?」「結婚していないってイコール、不足しているってことじゃないと思う。自立しているってことだと思う」と反転してみせたこともある(AbemaTV『ひろなかラジオ』2019年8月7日)。

 心に“革命家”を宿す彼女は、そのアナウンス力で社会のあちこちに火薬を仕掛け、価値観の転覆を試みようとする。その導火線は、自身に冠される“女子アナ”という肩書きにも、どこかでつながっているのかもしれない。


(文・飲用てれび)

テレビの中の女たち

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