また新曲『愛を知る』の選抜オーディションでは、欅坂46の『サイレントマジョリティー』という意外な選曲で、新たな一面を引き出していた。

 低い低音をベースとする同曲は本来阿部にとって声質が合わない楽曲ではあるものの、生来的な歌唱センスと持ち前の柔軟性で歌いきり、審査員からも高評価を得ていた。阿倍の伸びやかでいて力強く芯のあるボーカルは、むしろソロとして強みが発揮される性質のものともいえるが、実力者ひしめくラストアイドルのポテンシャルをさらに引き上げている。

 歌唱力と同じく阿部を特徴づけているのが170cmという恵まれた体格から生まれるしなやかなダンスだ。阿部のダンスが強調されたのは、「歩く芸術」を取り入れた集団行動を特徴とする『大人サバイバー』、そしてバブリーダンスの仕掛け人・akaneによる史上最高難度のダンスとされる『青春トレイン』だろう。

 中でもラストアイドルにとって転機となった楽曲『大人サバイバー』では、他のメンバーが寸分の狂いもない正確なダンスを披露しているなか、阿部は9頭身という圧倒的身体バランスから生まれる圧巻のパフォーマンスを披露し、もはやオーラとしか形容できないほどの表現力を示していた。

 阿部の類まれなる歌唱力とダンス。その背景には阿倍の音楽的ルーツと幼い頃から豊富なアイドル経験が影響しているのだろう。阿部菜々実という名前はそもそも、モーニング娘。が好きだった両親が安倍なつみから名付けたことはファンの間では広く知られている。

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