なぜ彼女たちは「センター」に立ったのか⁉
アイドルセンター論
AKB48 前田敦子(後編)
アイドルグループにとって、センターとは組織の顔であり象徴でもある。センターに選ばれる人間が誰であるのかによって、グループの方向性が変わるものだ。本連載ではセンターポジションに立った経験のあるアイドルに焦点を当てて、それぞれの魅力に迫っていく。
AKB48でいまや伝説とも称される前田は、歌唱力やダンスといった技術面に関してもグループ内で長けていたわけではない。しかし、前田敦子という人物がそこにいるだけでグループが輝いてしまう。それは彼女がドキュメンタリー性を体現する存在だったからだ。
まさに前田はAKB48の歴史において成長していく姿を私達に見せてくれた。
AKB48草創期の有名なエピソードがある。AKB48がグループ内に序列という概念を組み込んだ楽曲『渚のCHERRY』で、センターに抜擢された前田は目立つのが嫌という理由で大泣きしてしまったのだ。
素直な感情の発露とも言えるこのエピソードは、前田のパーソナリティが如実に表れているだろう。AKB48加入当初は、誰よりも目立つのが嫌いで内気な女の子だった。しかし、AKB48の活動を通して変化を見せ始める。