「あなたはメインで抜かれるところじゃなくても、必ずしっかり気を抜かずお芝居をしてる。当たり前かもしれないけど、それができる子は少ない。この先何があっても、その気持ちを絶対に忘れないで。どっかで誰かが見てるし、絶対誰かが見つけてくれるから。そのままでいて」

 その後、学園ものの作品に出演することが多かった伊藤。メインではない役どころが続いていたが、天海の言葉を胸に刻んできたという。当時の彼女はまだ小学生。にもかかわらず、天海のアドバイスを自分にとって大事なものとして受け取ったという事実に驚く。

「いい加減目覚めなさい」という天海のセリフが印象的だったドラマだが、天海は伊藤がすでに「目覚めて」いることを知っていたし、実際に伊藤は「目覚めて」いたのかもしれない。

 以前、別の番組で、伊藤は脇役を続けてきた自分についてこんなことも語っていた。

「ずっと端、端できて、センター育ちじゃないから、こちとら。だから『ここを獲り合わなきゃ』っていうのがないからこそ、『今度はコイツが頂点か、よろしくな』ぐらいの感じ」(『ボクらの時代』フジテレビ系、2019年4月21日)

 誰かのポジションを奪いたい。そんな思いは子役時代に置いてきた。丸顔にハスキーボイス、そしてかつての“教師”の言葉を胸に、彼女は誰にも立てないポジションに立ち、映像にリアリティを立ち上げる。

(文・飲用てれび)

テレビの中の女たち

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