センターを経験した西野は後に「自分がセンターじゃなくて3列目だったとしたら、「自分、全然映ってないな」とか思っちゃうんです。1列目も2列目も3列目も全部経験してきたから、今は常に後ろも意識して「ちゃんと見えてる?」ってなるべく聞くようにしてます」(『音楽ナタリー』乃木坂46『気づいたら片想い』特集より)とも語っている。

 この他者への意識は多くの挫折や困難を経験してきた西野の優しさであり、グループに対する思いの表れである。センターとしてグループを背負うという重圧からセンターとしての自分にばかり意識がいってしまいそうだが、西野がしきりに強調していたのは「メンバーを引き立てる」ということである。

 また西野とともに乃木坂46をリードしてきた白石麻衣は「西野が隣で踊っていると、落ち着くことに気がつきました。安定感があって頼れるので、私も自分のパフォーマンスに集中できる」(『乃木坂46×週刊プレイボーイ 2018』)と西野から受ける自身への影響をこのように語っているように、西野の存在はグループに調和と安定感をもたらしていった。これはまさに8thシングルの選抜発表で語っていたセンターとして西野が目標にしていたことだ。

 西野がそこに彼女が立っているだけで、周りを輝かせることができる稀有な存在である。乃木坂らしさに照らし合わせてみても、センターに選ばれたのは必然に思えてくる。そして西野が作り上げてきた乃木坂らしさは齋藤飛鳥を始めとした後輩メンバーへと引き継がれていくことだろう。

(文=川崎龍也)

アイドルセンター論

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