塚本は、2014年に江崎グリコの「パピコ」のキャンペーン企画として、期間限定で活動する30歳以上のAKB48メンバーを公募した、「大人AKB48 オーディション」の合格者だ。合格発表は同年4月12日。AKB48史的にはすでに前田敦子篠田麻里子板野友美がグループを去ったあとで、大島優子は卒業直前というタイミングだった。

 当時、「大人AKB48 オーディション」の企画は、ファンから激しく反発され大炎上した、もしくは、新展開への期待から大きく盛り上がった……そのどちらでもなかったのが実際のところだったのではないだろうか。

 ただ、2児を育てる専業主婦だという塚本自身は、島崎遥香が命名したとされる「まりり」というニックネームで、メンバーにもファンにも好意的に受け入れられた。グリコのCMにセンターとして登場し、短期間で劇場公演、握手会、テレビ番組出演、ドームコンサートなどを経験していった。

 前に出すぎず、かといったオドオドした様子もなく、AKB48の衣装や振り付けもそれほど違和感も痛々しさもなかった。コンサートでセンター曲を与えられるなど、特例的な好待遇はあったが、彼女に対して批判的な声は少なかった。そうした意味で、強固なメンタルが求められたであろう「大人AKB」の役割を果たす上で、塚本は適任者だったのだろう。

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