■母の前で最初で最後の本塁打
松井とともに球界を牽引した大スターと言えば、イチローがいる。09年の第2回WBC、延長戦にもつれ込んだ韓国との決勝で放った殊勲の一打は、今も語り草となっている。
「前回大会で物議を醸したいわゆる“向こう30年”発言もあって、韓国にとってもイチローは因縁の相手。韓国では、一塁が空いている状態で敬遠策を選ばなかったバッテリーに批判が集中しましたが、そこは真っ向勝負を挑んだ彼らを素直に称えるべきですよね。プライドがぶつかり合った極限の対決。試合後のインタビューで出た“ほぼイキかけました”は、そんな緊張感から解放されたイチローの本音だったと思います」(専門誌記者)
最後に紹介するのは巨人の坂本勇人。昨年11月8日の対ヤクルト、東京ドーム最終戦。コロナ禍に翻弄された球界を照らす、文字通りのハイライトとなったのが、彼の2000本安打達成だ。
「相手先発のロベルト・スアレスから、第1打席でいきなり二塁打。体勢を崩されながらも確実に芯でとらえる、坂本らしい芸術的な当たりでした。コロナの影響で史上最年少記録の更新こそ、かないませんでしたが、遊撃手で、しかも右打者ということを考えても唯一無二の快挙と言えます」(前出のスポーツ紙デスク)
坂本といえば、ルーキーだった07年5月12日。故郷にも近い姫路でのイースタン・日本ハム戦に出場した際、がん闘病ですでに車イス生活だった母親を球場に招待。それが最初で最後の生観戦となった彼女の前で、人生で初めて「狙って打った」本塁打を贈っている。
プロの“魂の一打”に、我々ファンは、いつの時代も魅了される――。