数々のアイドルの番組とドキュメンタリー映画を手掛けてきた、TBSプロデューサー竹中氏に、アイドルの周年ライブの魅力と、その一方で、年を重ねるごとに生まれてくる周年ライブの難しい部分について語ってもらった。
――数々のアイドルグループと仕事をしている竹中さんから見て、周年ライブはどんなイベントなのでしょうか?
周年ライブは諸刃の剣だと思っているんです。メモリアルイベントではあるんだけど、ここがゴールだと思わせてはいけない。次の指針を示すためのイベントであるべきだと思ってます。
AKB48の10周年公演はOGが参加して盛り上がったし、歴史を紐解くという意味では正しいと思いましたが、「その先」を打ち出してほしかったかなと。OGがあまりに強すぎるというのはあると思いますが、もっと未来を見たかったんです。過去の実績があればあるほど、周年ライブのハードルが上がっていく怖さはあると思います。
――竹中さんが監督されたSKE48のドキュメンタリー映画『アイドル』では、後半に10周年記念特別公演が映されていました。
松井珠理奈さんが活動休止している中、高柳明音さんが「SKE48はいまが一番楽しい」と声を挙げて、18年は過去のSKE48の勢いを超えようと一丸となって進んでいった。ファンも盛り上がって、10周年記念特別公演では例えば「ナゴヤドームでのライブが発表されるんじゃないか」という予想がされるほど、期待感が高まっていたと思います。
でも、結局大きな発表はされず、次の指針を示すことはできなかった。僕は周年ライブの一番ツラい現場を観てしまったんです。一番思い出に残ってる周年ライブかもしれません。
――終盤の高柳さんが独白するシーンは心に刺さりました。
あの場でナゴヤドームが発表されてハッピーエンドになることを望んで取材していたけど、明暗の暗のほうに転んでしまいました。でも、彼女がカメラの存在を忘れて感情をぶちまけてくれたことで、映画を終わらせることができたんです。1年間、グループを引っ張ってきたからこそ悔しさが伝わりました。またSKE48が燃えて、高柳さんの無念を晴らしてくれることを期待してます。