■上級スープの名前を店名に

 フランスの女優みたいにアンビバレントな風貌から、独特のアンニュイが漂う。というのに、彼女は食事ではあまり冒険せず、定番を選びがちだとか。カップ麺などもよく食べるという。ポテトチップスは開けたら1回で食べきる主義だそう。そんな食傾向を知るにつけ、かおたんが行きつけというのも納得できる。

 かおたんは渋谷のやはり行列店、「喜楽」の元店員が1983年に開業。東京メトロ千代田線赤坂駅すぐそばの、「中国料理 かおたん」は支店である。店名の「かおたん(高湯)」とは、上海や北京や台湾料理での上級スープの呼び名だ。

 広東ではシャンタン(上湯)と呼ぶ。濁った白湯ではなく透き通ったチンタン(清湯)に、惜しげもなく高級素材を入れることからそう呼ばれる。だから店の看板にも、「中国福建省の高級スープ」と書いてある。

 丁寧に灰汁を除いて豚ガラと鶏ガラから取った出汁に、独特の甘みがあり漢方の原料にもなるマコモを加え、刻んで香ばしく揚げた赤タマネギ、またオキアミの風味がついた香味油をたっぷりとスープに浮かべ、独特のスープを作っている。

 この焦がしネギにどこかポテチ感があるのだ。台湾系ラーメンにはよく乗るが、喜楽に比べて風味が控えめで、スープとの調和がよく取れている。トッピング具材は厚手の焼豚にメンマ、茹でもやしにさやえんどう(これが彩りだけでなく、味に深みを与えている)。

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