■切なすぎる展開の中に人柄を見る

 旅館を出た中沢は、真冬の山奥にあるキャンプ地で落したブレスレットを夜通しで探していた。他に旅館があるとも思えないような場所でやることもなかっただろうし、だからといって懐中電灯一つで無謀ともいえる探し物をするなんて、まさに中沢の気持ちを表しているかのようでまた泣けた。

 既に彼氏のいる女を好きになってしまい、でも自分の気持ちを諦められなくて、手探りでもきっかけを見つけたいという想い。優しさの塊でありながら一途なところにもグッとくる。その反面、告白の返事をされることに戸惑ってしまう可愛いところもあって「(返事は今ではなく)明日の朝にしてほしい」と返答してしまう。

 意外とシャイなことに小さな驚きもあって感情をくすぐられたのだが、返事を先延ばしにしたことで、中沢自身がよい返事ではないだろうと予想していることを感じさせた。これを裏付けるように、シーン終わりの中沢が部屋を出ていく様子に、先の暗い展開を感じさせた。

 手前から奥へ立ち去るというのは印象が小さくなることを意味していて、中沢の存在が小さくなると同時に奈未と潤之介のターンになることを予感させた。そして、中沢にとって切なすぎる朝が訪れる。

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