■「花田さんは面白いと思った奴を平気で遊ばせる」

 花田さんは面白いと思った奴を平気で遊ばせる。「コイツは放っておけばきっと面白いことやる」「勝手に新しいことを見つけてくる」「いつか記事になるだろう」ってね。でも、きっと我々の知らないところで空振りもたくさんしているはず。

 1989年にまだ駆け出しのジャーナリストだった江川紹子さんが、坂本弁護士一家失踪事件の取材をしたいと言い出したときも、花田編集長体制の『週刊文春』は全面的にバックアップした。当時、オウム真理教はそれほど注目されていなかったし、記事になるかどうかも分からなかったけど、花田さんが取材費を惜しむことはなかった。失踪事件はその後いったん迷宮入りしたけど、1995年に地下鉄サリン事件が起きると、メディアは一斉にオウム真理教の取材に殺到して、ずっとオウム真理教を追っていた江川紹子さんは一躍マスコミの寵児になった。新聞からもテレビからも引っ張りだこだった江川さんが『週刊文春』を主戦場にしたのは、花田編集長体制の『週刊文春』に恩義を感じていたから。要するに花田さんの遺産で、当時の編集長の手柄じゃない。その頃にはもう花田さんは文藝春秋にはいなかったんだけど。

 阿川佐和子さんにエッセイの連載を頼んだのも花田さん。『週刊文春』の阿川さんの連載はその後、対談(「阿川佐和子のこの人に会いたい」)に形を変えて続き、2012年には『聞く力』が文春新書で150万部の超ベストセラーになった。書籍化を提案した向坊健くんの功績もあるけど、そもそも花田さんが阿川佐和子を『週刊文春』に連れてこなければ、企画そのものが成り立たない。

(取材・文 菊池俊輔)

PROFILE

やなぎさわ たけし

1960年東京都生まれ。ノンフィクションライター。慶應義塾大学法学部卒業後、空調機メーカーを経て文藝春秋に入社。花田紀凱編集長の『週刊文春』に在籍。新谷学とは同時期に『Number』で働いたことも。2003年に独立、2007年に『1976年のアントニオ猪木』で単行本デビュー。

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