■鉄板ナポリタンを全国に広めた名店

 そして、朝香にとって「人生最高の一品」は名古屋市内でもレトロな一画、車道にある「喫茶ユキ」の「鉄板イタリアンスパゲッティ」だった。東海や一部関西ではナポリタンをイタリアンと呼び、鉄板に載せた熱々を提供する、鉄板ナポリタンも今では全国区になったが、その源がユキなのだ。

 先代店主がイタリア旅行でスパゲティを食した際、途中で冷めてしまうのを不満に思い、1961年に考案した。皿を板に見立てた略称、「板スパ」が転じて「イタリアンスパゲッティ」となったともいわれる。

 この何年か、車道にある名門・東海中学高校に取材で始終伺うのだが、最初に訪れた約20年前、モーニングを食べようと寄ったユキで、無理を言って先代夫人に鉄イタを所望した。メニューを眺めていたら、やはりたまらなくなったのだ。そして、卓上に運ばれた、ジュージューと音を立てる、激アツの鉄イタを啜った瞬間に襲ってきた、興奮と感動は忘れがたい。

 ともかく具沢山で、豚肉に玉ねぎにピーマン、もやしも入って、グリーンピースがパラパラ、ちょこんと赤ウインナが2本。見た目も麗しく、他所で食べるナポリタンとは格が違う。

 そして、麺の下に流し込まれた卵が次第に固まってくるのだが、この半熟からよく焼きへと移行する卵を、絡めつつ一気に食すわけ。つまり、これはいわば、ひつまぶしの洋麺版なのだ!

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