NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』(NHK総合ほか)の第3週は、百音(清原果耶/19)が祖母の初盆で帰省することで同級生に再会する。変わらない友情の素晴らしさや美しい海の風景に癒されながらも、東日本大震災による忘れられないつらい思い出がふとした瞬間に蘇るつらさがひしひしと伝わってきた。
東日本大震災で、誰もが傷を負い言葉にならない苦しい思いみを抱えている中で、及川亮・愛称りょーちん(永瀬廉/22)の穏やかな人柄や優しい気持ちはその場のすべてを包みこむような温かさがある。そして、りょーちんを演じる永瀬の少し高くて柔らかな声と話し方は、視聴者の心も魅了する魔法を持っているかのように感じられた。
■自然体で爽やかなりょーちんは永瀬本人に通じる
りょーちんの色気やモテ要素は、真っすぐな感性と素直さからくるものなのがよく分かる。百音が未知(蒔田彩珠/18)と祖母の一周忌の法要を自宅で行う準備をしていたところに、一升瓶を片手に同級生と歩いてくるりょーちんに、飾らない人柄が見えた。赤色のTシャツに短パンで素足にサンダル、洗いざらしの茶髪でふらりと歩いてくるところも、差し入れの一升瓶も箱や紙に入れたりせず瓶の首を掴んでそのまま持ってくるのも、男らしくていい。りょーちんを演じる永瀬は左利きなのだが、瓶を持つのも左だし、重たい一升瓶を軽々持ち歩くのが妙にリアルだった。
そして、いつも、誰に対しても優しいのだ。スピードを出した車に気付いて未知の腕をそっと引き寄せてあげたり、迎え火で片足を上げている未知がフラつかないよう腰の後ろに手を当ててあげたり。こういうさり気ない優しさに女は弱い。また、年イチで告白していた同級生の明日美(恒松祐里/22)が化粧していることに「なんか会ったときドキッとしたわ」と本人の前でサラリと言ってしまう。どうせドキッとなんてしてないでしょと思うけれど、言われた方はたまったものじゃない。まったく無意識にもほどがある。
りょーちんの自然体で爽やかな人柄は、素の永瀬がそこにいるからだろう。そして、これまでの出演作品では見たことのない、優しい顔や哀愁を漂わせているのは新しい発見だ。本格的なドラマ出演となった『俺のスカート、どこ行った?』(2019年/日本テレビ系)では、クラスのリーダー的存在の明智秀一として、女装家である担任の先生を学園から追放しようとするやっかいで冷めた高校生を演じた。家庭環境に問題を抱えているゆえ歪んだ態度を取っているのだが、人を見下し冷たく笑うのが印象的だった。また、『FLY!BOY!FLY!僕たち、CAはじめました』(2019年/カンテレ・フジテレビ系)では、キャビンアテンダントを目指す男子訓練生の朝川千空役で、同じ男性クルーと訓練をする中で友情を深め仕事の厳しさや楽しさを覚えて成長していく姿をみずみずしく演じていた。明智は陰のある男だったし、朝川は爽やかで優しい気持を持った男だったが、そのどちらでもないりょーちんの色気や含みのある優しい声やしぐさは、りょーちんを通して永瀬が持つ魅力そのものだ。背の高いりょーちんが、伏し目がちに話す時の哀愁にじんわりくるのを噛みしめたい。