■心優しいりょーちんが抱えるもの

 りょーちんが優しいのは幼少時からの特徴だと思うが、哀愁については震災が大きくかかわっている。百音の祖父・龍己(藤竜也/79)に「まあ、俺、漁師以外選択肢ないんで」と話す表情には、明るくも哀愁があった。それを聞いた龍己にも理解と含みがあって、誰かにお酒を勧められて断るりょーちんを「まだナインティーンだよぉ」と守るように制してくれた言葉には優しさが溢れていた。その含みが何なのかは、百音の母・亜哉子(鈴木京香/53)が電話をするシーンで一気に押し寄せてきた。昔懐かしのテレフォンリストから『及川美波』さんの携帯番号を探して電話をすると、りょーちんの父・新次(浅野忠信/47)が出たこと。

 その新次の携帯は、これまた懐かしの二つ折りのガラケーだったこと。背景には仮設住宅が立ち並び、カップ酒を片手にふらついているのを見れば察するに余りある。人物紹介によると、新次はかつてカリスマ的漁師で、百音の父・耕治(内野聖陽/52)の親友。百音が生まれる時にの中でも船を出してくれた恩人だが、震災で自分の船と大切な人を失ってから立ち直れずにいるという。それでも父親にも寄り添い、漁師になることを選び、誰を責めることなく慎ましく生きているりょーちんを思うと切なくて涙が出てくる。そんなりょーちんが百音に「海風、回ってきたなぁ」と言って天気を予測し、漁師が風向きと天気が必須であることを伝える表情は晴れやかで、爽やかすぎた。百音を助けてあげるかのように『海風』をさりげなく教えているのがとてもいいし、これからもきっといい関係が続くのだろう。今後も楽しみだ。
(文・青石 爽)

『おかえりモネ』は宮城県の海と山を舞台に気象予報士を目指すヒロインを描いたしたオリジナル脚本。永浦百音(清原果耶/19)は気仙沼の自然豊かな島で育ち、高校卒業後は家族から離れて登米市の森林組合で仕事をしている。百音の祖父の知り合いで、森林組合に山の運営を任せている新田サヤカ(夏木マリ/69)の家に下宿し、山や森のことを知っていく中で自分の将来を模索していた。ある日、気象予報士の朝岡覚(西島秀俊/50)に出会い、天気予報は誰かのために役に立つと感銘を受け気象予報士に興味を持つようになる。百音の妹・未知(蒔田彩珠/18)は将来養殖の研究者に、同級生の及川亮(永瀬廉/22)は漁師、野々村明日美(恒松祐里/22)と後藤三生(前田航基/22)は仙台の大学生、森林組合に併設された診療所に東京の大学病院から来る菅波光太朗(坂口健太郎/29)の生き方をある意味うらやましく思っていたが、海と山と空が繋がっていることを実感して天気予報という希望を見つける。森林組合で仕事をしながら勉強をするようになり、資格を取得してからは東京の気象予報会社に就職。気象予報士としてさまざまな経験を積み重ね成長し、故郷のために自分の知識と技術を生かしたいと帰郷し、地域や住む人々に貢献する物語である。

NHK連続テレビ小説(朝ドラ)『おかえりモネ』レビュー

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