■冷やし中華のライバルも台頭

 一方、地域性という面で特筆すべきが、岩手・盛岡の冷やし麺文化だ。

「盛岡冷麺に冷やしのじゃじゃ麺と、暑い季節に食欲を刺激する2つの冷やし麺の強豪が存在します。冷やし中華一強の勢力図ではないんですね」(前同)

 そんな激戦区の環境が、結果的に盛岡の冷やし中華のレベルを上げたのだろう。

「現地では『冷風麺』とも呼ばれ、盛岡冷麺、じゃじゃ麺に負けじと、各店が味を競っているんです」(同)

 実は近年、盛岡で起きた現象が全国で起きているという。冷やし中華のライバルとして、冷製ラーメンが台頭してきたのだ。前出の山田氏が力説する。

「その隆盛は、ものすごいです。名店もどんどん参入していて、福岡なら冷やしとんこつラーメンのように、各地のラーメンを冷たくしたものが、続々と開発されています。絶え間なく“極上の一杯”が誕生しているのです!」

 暑い季節の食の楽しみが増えるのはうれしい限りだ。それでも、現在は冷やし中華の牙城は揺るぎそうにない。

「冷やし中華はありふれた具材で再現でき、冷蔵庫に余っている食材を載せられることから、家庭で普及した。家庭の味は人々の記憶に刷り込まれるので、文化として残っていくうえで強いんですね」(前同)

 また、タレのバリエーションは少ないが、具材は地域ごと、家庭ごとにさまざまなのだ(次ページの一覧も参照)。

「海沿いの地域では、海老やイクラ、シラスなど、海の幸をトッピングするのはよくあること。ミカンやサクランボなど、果物を載せても、地域性が出ます。

 群馬出身の私は、母が作った豚の冷しゃぶと、千切りにした下仁田ネギを載せたゴマダレ冷やし中華が、今でも一番だと思っていますよ」(前出の料理研究家)

 なんでも好きな具材を載せてOKな冷やし中華。日本一うまい一杯を食べられるのは、我が家なのかも!?

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