■カッコよすぎる成瀬にチーム愛を見た
美月の事故を未然に防げたのではないかと落ち込み自己嫌悪になってしまう深澤に、声を掛けて気持ちに寄り添う成瀬が素敵だった。
「もっと、俺がちゃんとしてれば、朝倉だってあんなに無理せずに済んだのに」
それは深澤だけではなく、成瀬も同じ思いをしていた。美月が疲れていることを知りながら、いつも通りに仕事をさせてしまっていたことに罪悪感を持っていたのだ。それは、成瀬が救急医になりたての頃に患者優先で仕事をしていた情熱ある後輩が過労で亡くなった経験がありながら、美月の状態を知りながら止められなかった自分を責めていた。そして、いち視聴者である自分の身近にも起きるであろうことに気付く。仕事であるなら自分も多少の無理をすることがあるし、そうでもないと仕事が回らないと思ったらやるものだと頑張ってしまうもの。そして仕事仲間や同僚も同じようにしていたところで、声を掛けることはあっても止めることが出来るだろうか。
また、深澤が事故現場で気後れしているのを見兼ねて鼓舞したのも、いざ何かあっても俺がいると言わんばかりに心強い先輩だった。重症患者への処置を見守るのがとてもよくて、わずかに口角が上がるのが成瀬らしかった。
「時間をかけすぎだ。でもお前のおかげで患者は助かった」
深澤にしっかり注文を付けるくせに、ちゃんと褒めるあたりに成瀬の温かい人柄を感じた。成瀬は、美月に似た後輩が過労死してしまったことや、助けた少年の親からの訴訟を経験しているなど、心の痛みが分かる人間だ。この命の瀬戸際ともいえる現場で信頼し合える仲間がいることを喜んでいるのではなだろうか。これから様々な困難が待ち受けているだろう。けれど、難局を乗り越える度にチームが成熟していく様子をずっと見ていきたい。
(文・青石 爽)
『ナイト・ドクター』は、夜間救急専門の「ナイト・ドクター」として勤務する医師たちを描いたオリジナル脚本。柏桜会あさひ海浜病院は『365日24時間、どんな患者も断らない医療』を目指し、崩壊寸前の救急医療を立て直すべく、新たな働き方として夜間救急専門のチームを設立することになり、救命に情熱を持っている朝倉美月(波瑠/30)、美月の先輩救命医で現実主義の成瀬暁人(田中圭/36)、元内科医で病気がちな妹を大切に思う深澤新(岸優太/25)、研修医上がりでムードメーカーの桜庭瞬(北村匠海/23)、仕事もプライベートも完璧な高岡幸保(岡崎紗絵/25)、技術も皮肉も一流で指導医の本郷亨(沢村一樹/53)といった、年齢も性格も価値観も全く異なる医師たちが奮闘する青春群像医療ドラマである。
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