■連続ドラマで見たい!平野が持つ魅力とは
全体を通して、平野が演じる樹山の魅力が溢れていた作品だった。たとえば、樹山が生徒それぞれの事情に合わせて自分ができることをしようと試行錯誤するところは、一見空回りのように見えるけれど何とかしたい救いたいと思う強い気持ちが伝わってきた。
ヤングケアラーで自由なお金を持たない乃木(板垣李光人/19)にパンを与えたことを面白がられて他の生徒に追いかけられたり、偽善者だと言われても心が折れずに世話を焼き続ける樹山が涙ぐましい。
母親の暴力に悩む木の葉(なにわ男子・道枝駿佑/19)から、母親が亡くなったと連絡があって病院に駆け付けた時の樹山は本当につらそうだった。木の葉の隣に座って話しを聞いているだけなのに、みるみるうちに目に涙が溜まっていく。そしてたまらず泣き出す木の葉の背中をさすっている手が温かい。これは樹山を演じる平野が持つ、優しさや人を思いやる気持ちが素になって出ているように見えた。
また、生徒の将来を一緒に考えて希望する仕事に就けるよう導きたいという情熱を持っているところも、平野自身が持つ素の良さが出ているように感じた。働きながら国家資格の受験資格が取得できる市のプロジェクトを導入したり、市が主催する地域活性親睦会に出席するなど有言実行タイプなのが気持ちいい。演説では、槇尾高校の窮状を訴え頭を下げる樹山に胸が熱くなった。
「子どもに親は選べない、でも貧困から抜け出す道は選べる。これはそのためのプロセスです。どうか若者たちを助けてください。彼らに未来への希望を与えてください。お願いします」
これは今の社会や大人たちに対するメッセージのように聞こえたし、真剣な表情と感情が高まってうるんだ真っすぐな目に引き込まれてしまう。一生懸命さが伝わってきて応援したくなるし、樹山が先生としてたくましく成長していく様子を、スペシャルドラマではなく連続ドラマでじっくり見ていきたいと思った。
それは、樹山という一人の男性を魅力的に演じていた平野の魅力が大きいゆえで、もっと平野の芝居が見たいとも思った。今回のように、ヒューマンはもちろん、サスペンス、アクションなどもいいだろう。コメディやラブストーリーだけではなく、様々な職業で生きている自分ではない人物を演じて、また魅了してほしい。
(文・青石 爽)