…と夢想しながら、一番人気のブラックカレーを注文する。確か前には迷った挙げ句にキーマを頼んだはずだ。その日はとても空腹で、ゴロッと手羽元が3本入り、見た目もボリューミーなブラックカレー一点勝負の気分だった。

 料理が出るまで待つ間、店内を見回すと、60年代のソフトロックやR&Bのレコードジャケットが飾ってあり、BGMもたぶん有線だが、その辺の渋かったり甘かったりの曲が次々とかかる。

 ああ、この手羽元にしゃぶりつき、やはり一杯飲りたいなぁ…。なんでも女主人はこの場所でダイニングバーを経営していたが、スリランカ人の友人が作ったカレーの美味しさに感動し、カレーライス専門店としてリニューアルしたとか。

 しかし、ここのカレーはまず盛りつけが美麗だ。シャリシャリのオニオンスライスに香草、プチトマトに半切りのゆで卵がトッピングされ、楊枝に刺したらっきょうが添えられる。見た瞬間、ぼくは海賊船を想起した。帆船の帆のように大きな手羽元で中央が盛り上がってもいる。鶏は煮込まれておらず、あくまでローストにソースが注がれた状態。骨離れはさほどよくなく、手指を汚して貪らなければならない。

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