■空気階段のコントには「文学的な味わい」がある

 お笑いコンビ・ぺこぱの漫才は“人を傷つけない笑い”として広く受け入れられたが、空気階段のコントも相手を尊重する“優しいネタ”と言えるのかもしれない。1本目のネタも、広い意味では変な人の個性を活かしたネタと言えそうだ。

「SMプレイの最中に火事になってしまって必死に逃げる2人ですから、見た目は恥ずかしい、かっこ悪い状況でした。ただ、そんな2人が逃げたり、人を助けようとしたり、カッコイイこと言ったりして、イケてることをするというのが“ギャップ”で滑稽に見える。

 設定がわかりやすいですし、そのうえでちょっと彼らの好きな感じ、文学的な味わいがありましたよね」

 ラリー氏は、2020年の『キングオブコント』の空気階段のコントを目にした際にも「コントで文学をやるタイプの芸人が久しぶりに出てきた」とツイートしていた。

「文学的というのはエンタメとはまた別で、単純に笑えるとか泣けるとかだけではなく、見ている人にちょっと複雑な感情を残す、というような感じで、そこが空気階段の魅力でもある。彼らがやった2本は非常に面白い、笑えるネタなんですけど、ただ笑るだけではなくて、ちょっといい映画を見たような、いい小説を読んだときのような余韻を残すようなネタでした。

 変な感動みたいなものがありましたが、そこが彼らのすごいところ。審査員もコントをやっている人たちだったので、空気階段のそういったところを評価して、高得点をつけたんだと思います」

 見事な優勝を果たした空気階段――彼らが新世代のお笑いスターの仲間入りを果たす日はそう遠くはなさそうだ。

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