■芸人が涙する歌『浅草キッド』
もぐらが歌詞を暗記していたことからもわかるように、東京・浅草で、売れることを夢見て芸人修業をした時代についてたけし自身が作詞作曲をした『浅草キッド』は、芸人なら誰もが知る名曲である。
19年末の『第70回NHK紅白歌合戦』でたけしが歌手として出演した際は、いつもの“お笑い芸人・たけし”とはまるで違う姿を見せたのは記憶に新しい。NHKのインタビューでたけしは、
「ツービートという漫才師が出るために何組の漫才師がダメになったかも分かるし。自分がある程度、売れた時に作った歌。同じ時期の同じような生活をして、一緒にお酒飲んだり騒いでいたのに、なんでこいつが落ち込んでいって自分が売れていったかということには罪悪感がある」
と語っていた。それだけに、空気階段にかけた言葉には、実に重みがあった。