■『オーズ』は「欲望」を肯定的に描いた異色の作品

 シリーズ12作目の渡部秀(30)主演作『オーズ』は、「作品」部門で3位、「仮面ライダー」部門では200人以上のライダーから「オーズ」が4位、2号ライダーの「バース」が73位を記録。さらに、音楽部門でも大黒摩季による主題歌『Anything Goes!』が3位を記録したほか、ファンの間では伝説と名高い渡部と三浦涼介(34)による挿入歌『Time judged all』も9位にランクインしている。挿入歌に限った場合、この曲が1位だった。

「『オーズ』は、“欲望”をテーマにした作品です。渡部演じる“少しの小銭と明日のパンツがあればいい”がモットーの旅人・火野映司(ひの・えいじ)が、800年の眠りから目覚めた怪人・グリードの幹部の一人でなぜか右手しか復活できなかった“アンク”(演:三浦涼介)に導かれ、なし崩し的に欲望のメダル・コアメダルをめぐる戦いに巻き込まれるストーリーです」

 アンクは重傷を負った刑事・泉慎吾の肉体を乗っ取って事実上の人質として扱っており、映司との関係も「互いに利用しあっている」という、子供向けヒーロー作品の相棒キャラとしては異色の関係性だった。

「『オーズ』の幹部怪人であるグリードは、人間の欲望から生まれる怪人“ヤミー”を生み出し、エネルギーであるセルメダルを集めるんですが、この作品は“欲望”をテーマにした作品としては珍しく“欲張りは失敗する”という描き方ではなく、“欲望は生きるためのエネルギー”“今日という日を明日にすることさえ欲望”と、欲望の正の側面も描いているのも特徴です。

 主人公の映司も、一見すると無欲ですが、終盤や劇場版で規格外すぎる欲望を持っていることが明らかになる場面もありますね。

 こうした深いドラマが大人の視聴者に刺さったほか、メインターゲットの子どもにも、全力で制作したからこその熱量が伝わったんだと思います」

 子ども人気の高さがよく分かるエピソードとして、玩具面では『オーズ』の変身アイテムでありグリードの生命線でもある「オーメダル」が劇中だけでなく現実でも熾烈な争奪戦が行われ、メガヒットを記録。総売り上げ枚数が当時発行された1円、5円、50円玉の発行数を上回ったというエピソードでも知られている。

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