■「(仲間に)息の根止めろ。抑えろ」
そして、完全にタガの外れた亥ノ吉はウソのウワサを流したうえ開き直って「晩来の正体をバラす」と言い出した仲間(須賀健太)を殺害し、
「このままバレたら俺だけじゃねぇ。世直し組全部つるし上げられるぞ!」「勘太を晩来に仕立て、死んだことにする。(仲間に)息の根止めろ。抑えろ」
と、実に悪い表情で仲間たちにも手を汚させたのだ。
そのほかにも、「もう一人いる。晩来の字が俺だと悟られる前に口を封じねぇと」と当然のように罪のない女性の暗殺を思い立ったり、才三に対して「小せぇ頃から俺の後ろに隠れてやがって。今度も俺がかばってやるって言ってるんだよ。だから邪魔すんじゃねぇ」とゲスい表情で言い放ったうえ、それでも食い下がる才三に見切りをつけて殺したり、完全に外道に落ちた亥ノ吉を演じた岸は、数多くの名シーンを生み出した。
最終的には、
「俺たち似た者同士じゃねぇか! 俺だって世の中良くしてやろうと必死でやってきたんでぇ。そのためなら己の手を汚すことだっていとわねぇ! 仕事人だって、親方だって、そうなのでござんしょ!?」「勘弁してくれ……勘弁してくれえええ!」
と命乞いするほど典型的な小悪党になり下がってしまった亥ノ吉は、小五郎(東山)に始末される……というストーリーだった。