■稀代のイノベーター

 そして、1位の丸山とは2点の僅差の78点で2位となった。だが、中華屋でバンバンジーと餃子をオーダーし、食べ合わせることはままある。口内で結果的には丸山のメニューと同じ味を誰もが経験しているのだ。つまり、あらかじめ予想できる味を一品に仕立て上げた。

 という点で、いささか予定調和的ではある。一方の安田のメニューは「餃子をチャイを飲みながら食べる」という、彼独自の激渋な食スタイルから発案されている。実にチャレンジングなメニューだが、どちらがイノベーターかはすぐわかるだろう。

 僕は彼が主演した13年公開の映画『ばしゃ馬さんとビッグマウス』を、一昨年になって遅ればせながら名画座で観て、まだ一度も脚本を書いたことがないのにシナリオ学校に通う、やけに自信家だが憎めない、彼の演じたキャラクターに大いに共感した。大胆な発想をする点では、今回の彼と近いかもしれない。大阪王将や本家王将の味には、関西出身の面々は我々以上に慣れ親しんでいる。だからこそ、餃子をスイーツに転じさせるぐらいの発想力が求められるのだ。

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