■食の安全を脅かす中国産食材

 ある小売業者が、ため息ながらに現状について話してくれた。

「もちろん、どこで最も長く育てられたか、書類で確認するようにしています。しかし、偽造した書類で熊本県産だといわれたら、外見で判断できないだけに、お手上げです」

 しかし、小売り側に、まったく責任がないかというと、そうでもない。

「大手のスーパーで実際にあった話ですが、店舗周辺に配布した新聞折り込みチラシに〈島根県産ほか国内産活サザエ貝〉と記載されていました。しかし、そのほとんどが韓国産で、スーパー側の確認不足が原因だったようです」(流通関係者)

 前出の安田氏が、産地偽装の闇について解説する。

「産地偽装は、消費者の食への信頼を裏切る行為。特に中国産は、日本で使用が認められない農薬や抗生物質を使うケースがあり、消費者の安全が脅かされることにもつながります」

 事実、中国産アサリには、過去に何度も除草剤の『プロメトリン』が検出されており、安全とは言い難い。

 また、安い中国産を国産品と偽装する事例は、後を絶たない。

「昨年暮れ、岐阜県高山市の水産卸会社が、『愛知県産』として販売したウナギの開き3万125本のうち、6640本分が中国産だったんです。卸先のスーパーやホテルなどから愛知県産ウナギの注文を受けたものの、国産ウナギの入荷が激減。困って、中国産の産地を偽装したとのことです」(流通ジャーナリスト)

 一番の被害者は、むろん、購入した消費者。しかし、消費者を騙した報いは業者に確実に返ってくる。

「大阪のあべのハルカスなどに出店する専門店でも、中国産うなぎを国産と称して客に提供していましたが、偽装が発覚し、結果的に破産申告する事態にまでなりました」(前同)

 産地偽装は水産物だけではない。加工食品でも偽装が横行している。昨年の暮れには、あんこでも偽装が発覚した。

「川崎市の製造会社が、こしあんを『北海道産小豆100%使用』と表示していました。ところが、北海道産の小豆は1割だけで、9割はカナダ産だったんです。同社製のあんパンなどは、大手スーパーでも販売されていただけに、影響は大きかった」(同)

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