■“直球の威力”あっての変化球
同じくスライダーを“魔球”の域にまで高めたのが、落合中日の守護神として君臨した岩瀬仁紀(47)だ。
「先発の私は対戦する機会もほとんどなかったですが、対戦した選手は“消える”と口をそろえていました。
リリースポイントは少し違いますが、同じ左腕の日本ハム、宮西尚生(36)も似たタイプ。メジャーではスプリットの印象が強い楽天の田中将大(33)も、渡米前はブレーキの効いた抜群のスライダーを投げていましたよね」(藪氏)
現代のプロ野球において、“魔球王”と言えるのが、オリックスの山本由伸(23)。
「現役選手100人が選ぶ、フジテレビのスポーツ番組『S -PARK』の恒例企画で昨年、驚きの結果が。各変化球のトップ10に、フォークを筆頭にカーブ、スライダーなど、山本の持ち球5種すべてがランクインしたんです。プロでも手こずる球ばかり、ということです」(スポーツライター)
なぜ、山本が繰り出す変化球は、これほどまでに“打ちにくい”のか。
「これはすべての投手に言えますが、どんな変化球も真っすぐに威力があって初めて生きる。山本があれだけの活躍ができるのも、大前提として真っすぐの球威が抜群にいいから。
球種の豊富さを過信しすぎると、真っすぐまで“数ある球種の一つ”になってしまいかねませんからね」
そう語る田尾氏は、山本の一世代前にオリックスでエースとして活躍した金子千尋(38)を
「結果的に、それで失敗した」と評して、こう続ける。
「たとえフォークで空振り三振に終わっても、打者の感覚的には“かわされた”と思うだけ。その点、真っすぐでズバッと決められると、ダメージも大きい。調子がいいときほど、次の試合にも影響します。
佐々木の完全試合だと、吉田正尚が見逃し三振に倒れた3打席目のインコース真っすぐ。あれは本人もこたえたはずです」(前同)
剛球あっての魔球。現在進行形の“伝説”を築き上げている佐々木朗希の活躍が、この法則の正しさを証明している。