■西条の成長とボクシング部の未来

 西条が出した決断は、ボクシング部で、部員たちの練習パートナーとして存在することだった。桐沢にお願いしますと頭を下げるまでには、相当な葛藤があっただろう。

 実際、ボクシングとは無関係ともいえる演劇部に入ることでボクシングを忘れようとしたけれど、諦めきれなかったのだ。桐沢の言葉、伊庭の気持ちがしっかり伝わって、前向きに考えて決断した西条がカッコいい。それをうれしそうに受け入れるボクシング部員のみんなも本当にいい子だ。

 そして、桐沢も生きる希望を持って上を向いたことで幸運が舞い込んできた。一度は諦めた焼鳥屋をまた始めることができるチャンスがめぐってきたのだ。迷い悩んだ末に、ボクシング部のコーチも、非常勤講師も、焼鳥屋も、全部やると決めたのが桐沢らしい。

 それは本当に大変なことだけれど、今日、生きることさえ意味を見出せなかった男が、人との出会いやめぐりあわせで生きるエネルギーをもらい、強く生きていこうとする姿は応援したくなる。次回が最終回であることが信じられないのだが、桐沢が選んだ道を見せつけてほしい。(文・青石 爽)

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