■俳優・神宮寺勇太に期待すること

 当作品で連続ドラマ初の単独主演を務めた神宮寺勇太だが、与えられた役を最大限に魅せることができる俳優だ。憑依型の芝居とは違って、人物そのものに寄り添って、生き方や考え方を想像して、自分の中に落とし込み表現をする。よって、神宮寺本人が持っている優しさや爽やかさ、心温かい人柄などがにじみ出てくるのだろう。

 監督の中茎強氏がインタビューで、神宮寺は求められていることを察知する能力に長けており、仕事をしているとき、好きな同僚の女性と一緒のとき、自宅でくつろいでいるとき、それぞれをうまく演じ分けていたと評価している。

 また、迷ったときには周囲に相談するなど素直なところもあり、座長として信頼されていたことがうかがえる。そんな神宮寺には、どんな役であろうと真摯に向き合うことで役も本人も成長するような芝居が見たい。特殊な職業の人物もいいが、一般的な業種や職種にありながら、日々を生きる素晴らしさを見せてくれるような作品がいい。この特段、なにも変わらないご時世の淡々とした日常に、こんな人が隣にいたら幸せだなと思えるような、温かみを届けてほしい。(文・青石 爽)

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