■明智の純粋さを際立たせる萩原利久の魅力

 明智は、中学時代にギャングチームのパシリをやっていた。喧嘩も弱く、知恵を使って相手と対峙するといったことを避け、人の顔色を見ながら生きてきたという。自分には個性やプライドがないことを悔しく思っていて、自分に正直に生きている信長に憧れているとも言い、それは本心のように見えた。

 そして、信長から「うらやましいなら、貴様も正直に生きればよい」と言われ、陣中見舞いにもらった干し柿が実は苦手だと伝えて笑う顔は、15歳らしさがあってほほ笑ましかった。この純粋さは、演じる萩原利久の魅力のひとつだろう。

 萩原は、『美しい彼』(2021年/毎日放送他)で、吃音症のため無口で友達がいない高校生を演じた。スクールカーストの頂点に立つクラスメイトに憧れ、やがて恋心を抱くまでの丁寧な芝居が印象に残っている。

 強いものに憧れる目線やうれしそうな表情は、心からそう感じているからだと伝わってくるのだ。それは明智にも見られ、信長と話しているときは、穏やかで優しさを感じられるような人柄であることが伝わってきた。しかし、残念なことに歴史は繰り返されてしまう。

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