■宮沢氷魚・和彦が愛に「全部なかったことにしてくれ」と発言

「登場人物が共感できない行動を繰り返すことに加えて、ドラマ全体に道徳観が欠如しており、社会規範から逸脱した行為が容易く行なわれる。国民的ドラマである朝ドラに期待される“きちんと頑張ったらいつか必ず報われる”という展開が裏切られることも、『ちむどんどん』が激しく嫌われている理由の1つだと思われます」(前出のテレビ誌編集者)

 そんな道徳観の欠如や朝ドラに期待する、“真っ当な人が報われる展開への裏切り”が表れたシーンが2位。7月8日放送の第70話で和彦が愛に対して「全部なかったことにしてくれ。ごめん、愛と結婚する資格はない」と言い放った場面だ。

 それを受けて、和彦が暢子に心変わりしていることに気づいていた愛は、手紙で和彦に別れを告げ、ファッションジャーナリストの夢を実現するためにパリへ旅立った。その後、和彦は愛と破局した当日に暢子に告白するという素早い行動に出る。

 6年間交際中で、和彦のためにいろいろと考えて行動し、しかも婚約中だった愛に対する和彦のこの言い草には、「無駄に愛ちゃんが傷ついただけだし、無駄に和彦がクズ彦になっただけだった」「愛ちゃんのせいにする和彦ほんとクズ。だいたい『なかったこと』になんかならねえよ」「和彦がクズ彦すぎてついていけないのだが、??『全部なかったことにしてくれ』の一言で終わりにできると思ってるのも無理だし愛ちゃんパリ行った途端暢子に告白するのも無理」と、こちらも視聴者が激怒する事態となってしまった。

「この回の少し前あたりから優柔不断な和彦が全開になってきており、SNSでは“クズ彦”と称されていました。だから、この和彦が愛に重大事項を告げるシーンでは、酷いことを言わないかハラハラドキドキしていたのですが、“全部なかったことにしてくれ”は想像を軽く上回ってきて、思わず吹き出してしまいました。それくらい、酷い、ゲスの極みのような言葉でしたね」(前出のテレビ誌編集者)

 テレビ誌編集者は続ける。

「そして、沖縄返還50周年を記念して作られたドラマなのに、当地・沖縄へのリスペクトが著しく欠如していると感じられることも、視聴者が『ちむどんどん』に強烈な嫌悪感を抱く大きな理由です。その最たる例が、第15週『ウークイの夜』で描かれた、暢子と和彦が結ばれたシーンです」

 第15週、東洋新聞学芸部記者の和彦は遺骨収集の取材のため沖縄に滞在していた。7月22日放送の第75話では、ベテラン俳優・津嘉山正種(78)演じる嘉手苅源次(かでかる・げんじ)が戦没者の遺骨収集をするきっかけとなった壮絶な過去を和彦に語った。

 沖縄で地上戦が起こっているさなか、親とはぐれて山の中で一人さまよう女の子を不憫に思い、嘉手苅は数日行動を共にしていた。だが、米軍の艦砲射撃から無我夢中で逃げているうちに、女の子の手を離してしまっていた。振り返ると女の子が倒れていたが、砲撃が続いている中でとても引き返すことはできなかった――。

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