■和彦は暢子への告白に「沖縄戦」を“利用”

 戦後、嘉手苅はその子の骨を拾いに行こうと探したものの、地形が変わるほどの壮絶な戦闘だったために見つけられず――。今も遺骨収集を続けているのは、その女の子を探しているからだ、という後悔を和彦に語った。

 その、重く、とても大切な話を嘉手苅に語ってもらった直後、和彦は暢子と幼少期に遊んだやんばるの海辺で偶然再会する。そこで和彦はなんと、「僕はこの手を絶対に離したくない。嘉手刈さんの分まで。絶対に、絶対に離したくないんだ、暢子」と、いきなり暢子に愛を告白するのだが、このシーンが、『ちむどんどん』の“激怒酷評シーン”ワースト1位だ。

「沖縄戦犠牲者の遺骨収集に携わる嘉手苅氏の女の子への思いは、彼が長年頑なに話さなかったことです。しかし、さまざまなことが重なって、ようやく新聞記者の和彦に明かしたという経緯がある。

 なのに、その戦争の悲惨な経験と並列して、和彦が“暢子の手を離したくない”と言ったことへの強烈な違和感を感じた視聴者が多数いました。“手を離さない”という共通点、その1点で、人の命が失われる戦争と、恋愛・結婚とをつなげてしてしまったことに猛批判が殺到しました」(前出のテレビ誌編集者)

 暢子と和彦の思いが通じ合ったこのシーンには、「嘉手苅さんの遺骨収集にまつわる大事なシーンを和彦のプロポーズで回想として出したのはやっぱりおかしい演出だったと思う」「嘉手苅さんのおはなしって終わり? このよくわからない和彦と暢子の結婚の踏み台になったわけ? そんな簡単な話じゃないんだけど」「暢子と和彦が結ばれたのは正直どうでもいいが、嘉手苅さんの話を聞いた後の和彦のセリフは酷すぎる ドラマなので多少無茶なセリフ運びでも構わないけど、戦争体験を踏み台にするような発言はすべきでなかったと思う」と、『ちむどんどん』史上最大級に激烈な怒りの声が飛んでしまっている。

「和彦は、嘉手苅さんの取材をしながら、そこで出た言葉を記憶し、直後のプロポーズに使ったんですよね。視聴者の怒りが殺到したように、ちょっと考えられないストーリー展開、脚本ですよね。主人公の熱愛成就のため、“戦争体験は踏み台”となったといった意見がありますが、まさにそう感じられてしまうあまりにも残念なシーンでしたね……」(前出のテレビ誌編集者)

 最終回の第125話が放送される9月30日まであと42日。それまでに視聴者が「ちむどんどんする(=心がワクワクする)」日は来るのだろうか――。

NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』
NHK総合 月~土 8:00~8:15、12:45~13:00(土曜は一週間の振り返りを放送)
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/chimudondon/

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