■逆方向にも飛ばせる高い技術

 他方、村上の最大の魅力は、なんといっても逆方向にも飛ばせる高い技術。

 実際、今季もセンターからレフトにかけての本塁打が実に17本を数えている。

「逆方向にあれだけ飛ばせるのは、“外角球を引っ張る”という感覚をつかめているから。バースなんかも逆方向は多かったけど、上から叩く彼の打球には、ゴルフのサンドウェッジで打ったときのような独特のスピンがかかっていた。右左の違いはあるが、タイプ的に全盛期の山本浩二さんに近い」(前出の角氏)

■両者に共通する選球眼のよさ

 そんな両者に共通するのは、選球眼のよさ。特に王の持つ通算2390四球は、2位の落合博満を900以上も引き離して歴代ダントツだ。

「4番打者の“勲章”とも言える四球のシーズン記録は、4位の丸佳浩、6位の金本知憲の2人を除いて上位12位までがすべて王と、もはや異次元の域」(前出のデスク)

 村上といえば、2年目の2019年シーズンに叩き出した、歴代4位で日本人最多の187三振も記憶に新しい。この劇的なまでの変貌ぶりには、はたして、どんな背景があったのか。

■捕手出身ゆえの“鋭い読み”

 ヤクルトOBである秦真司氏は、「ヤクルトには“打席での知力”を重視するという野村克也さんから続く伝統がある」と語る。

「自分もそうだったから言うわけではないですが、彼がプロ入りまで捕手をやっていたというのは、素地としてはかなり大きいはず。もともとの高い能力に、相手バッテリーの配球や状況別の対応、投手の球道や球質の見極めといったプラスアルファが、経験によって身についた。それが今季のさらなる“進化”につながっているのでは」(前同)

 それを象徴したのが、1試合2発で“55本”を達成した9月13日、本拠地・神宮での巨人戦だろう。

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