■菅野智之と大勢からホームラン!

 前の試合では抑えられていた菅野智之のやや甘く入った内角高めの直球をライト上段まで運ぶと、2本目は大勢の渾身の直球を左中間に放り込んだ。

「大勢に対しては、まず間違いなく“勝負は絶対に外角”という読みがあったはず。しかも、初球のフォークが大きく外れた後だけに、“真っすぐ勝負”で来ると踏んでいたとも考えられる。甘い球ではありませんでしたが、村上が一枚上手でしたね」(スポーツ紙デスク)

■1球を確実に仕留める打席での集中力

 まともな勝負を避けられるのも4番の宿命。真価が問われるのはむしろ、それからという見方もできる。

「たとえ4打席敬遠されても、勝負に来た5打席目の1球を確実に仕留められたのが、王さんという人。868本という数字がすごいのは当然だけど、そこに至るまでの尋常ならざる打席の重み、みたいなものも改めて感じるよね。1球を確実に仕留める打席での集中力は、村上にも王さんと同じものを感じるよ」(角氏)

■プロ入り前から野球に対する貪欲さ

 では、両者の打棒はいかに出来上がっていったのか。

 王の場合は、中学時代からの恩師・荒川博コーチとの二人三脚が、つとに知られるところだ。一方、プロ入り前の村上を、前出の秦氏が、こう証言する。

「村上は、井手らっきょさんと一緒に、僕も立ち上げに携わった『PBA(プロフェッショナル・ベースボール・アカデミー)』の練習生だったんです。現場で指導に当たった今井(譲二)さんからは、“負けん気は当時から強かったし、弱音も一切、吐かなかった”といった話を聞いています。そういった野球に対する貪欲さは、ベンチで人一倍、声を出して仲間を鼓舞する現在の姿からも伝わってきますよね」

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