■平野紫耀が演じる黒崎の複雑な想いと人間関係に注目

 平野が演じる黒崎は、過去に詐欺で家族を失った経験があり、被害者の感情を持っている。ふだんの平野は「だますよりだまされるほう」だというが、実は物事を冷静に判断することができる人だ。

 たとえば芝居でいえば、平野のイメージで書かれた台本で、愛嬌のある少し間抜けな人物を演じることが難しかったと、雑誌のインタビューで答えている。自分では思いつかないような発想や行動をするため、一度、冷静に考えて芝居をしていたというのだ。自分ではない人物を演じることに、真剣に向き合っているからこそ生まれる苦悩と言えるだろう。

 今作では、詐欺師という特殊な仕事をする青年を演じる。孤独で苦しみが癒えず復讐を生きがいにする反面、愛情に飢えていて悲しみが消えないという葛藤を、どう演じるのか。そこには、黒崎に関わる人たちとの“人間関係”がポイントになるだろう。他人を信用しない黒崎がさまざまな人物に出会い変化していくことで、ダークヒーロー・黒崎に深みが出てくる。恋愛要素ではない、信頼する人との繫がりや人が恋しいという感情に寄り添った、温かさのある繊細な表現に心を奪われたい。

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